研究課題/領域番号 |
26381318
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大塚 玲 静岡大学, 教育学部, 教授 (00233172)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 通級による指導 / 発達障害 / サテライト方式 / 巡回型 |
研究実績の概要 |
平成26年度は以下の研究活動を行った。 1.静岡県において発達障害を対象としたサテライト方式による通級による指導を担当している教員への面接調査 静岡県内の2名の通級指導教室担当者に聞き取り調査を実施した。その結果、以下のようなサテライト方式の成果と課題が明らかになった。成果としては、サテライト先の学校は、通級による指導を受けていない、あるいは受けることができない児童について、専門的な知識をもつ通級指導担当教員に気軽に相談することができることである。また、教室での授業の様子を参観することで、通級対象の児童や気になる児童だけではなく、担任の授業の進め方の課題などを、特別支援教育コーディネーターや管理職と情報共有できることもあげられた。課題としては、サテライト校へ行く準備や移動時間など、担当者の負担が大きいことや、教室環境や教材・教具が十分でないことが指摘された。また、担当者は対象児童だけではなく、学級担任、保護者にも対応しなくてはならないが、それに加えて、サテライト校の通級の対象となっていない児童についても関わるとなると、負担が大きく、また高い専門性が必要とされることも指摘された。 2.全国実態調査に向けての準備 文献検討や県教育委員会の担当者と意見交換を行い、全国実態調査に向けての準備を行った。さらに、巡回による通級による指導が盛んな愛知県のA市立B小学校を訪問し、聞き取り調査を行った。A市では、すべての小学校・中学校において巡回による指導が行われている。A市の巡回型の指導の成果と課題は静岡県のサテライト方式のそれと共通点が多く、コーディネーター等の校内の教員と話し合う時間の確保や、教室や教材などの環境整備が課題としてあげられた。しかし、支援が必要な児童生徒に対して、学年が変わって状態が不安定になるなどの問題が起きてもすぐに対応できるといった成果が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成26年度は①静岡県において発達障害を対象としたサテライト方式による通級による指導を担当している教員への面接調査と②全国実態調査に向けての準備を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、以下の研究活動を行う予定である。 1.静岡県内の先進事例について通級指導担当教員と関係者への面接調査の継続 平成26年度に引き続き、同じ事例の関係者に面接調査を行う。連携の取り方や関わり方がどのように変化したかを把握する。また、事例によっては通級指導担当教員やサテライト校の校長や特別支援教育コーディネーターが異動等で替わる可能性も想定される。その場合はサテライト校における通級指導担当教員の役割やこれまでの連携のあり方がどのように変化したか、あるいはしなかったのかなどについても聴取し、そうした影響をもたらす要因について考察する。 2.サテライト方式の通級指導教室に関する全国実態調査 全国で実施されている発達障害のある児童生徒を対象としたサテライト方式または巡回型の通級指導教室の実態調査を行う。まず、都道府県教育委員会に対しアンケート調査を実施し、この種の通級による指導が実施されているか否か、具体的にどこの学校で実施されているかを把握する予定である。それを踏まえて、当該の通級指導教室にアンケート調査を実施し、その実態や課題を明らかにしたいと考えている。また、学会発表等で巡回型の通級の実施が報告されており、特色のある地域の通級指導教室を訪問し、聞き取り調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた成果発表の旅費や宿泊費が想定したほどではなかったことと、静岡県におけるサテライト方式による通級指導教室に関する調査結果(学会発表分)を論文としてまとめる作業が遅れたため、データのさらなる分析や図表作成のために用意していた資料整理のための人件費(アルバイト費用)を使用しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
全国調査の分析のため、当初想定していなかった分析ソフトやドキュメントスキャナの購入に充てる予定である。また、全国調査はまず都道府県教育委員会にアンケート用紙を郵送し、その結果を踏まえ、巡回型やサテライト方式の通級を実施している学校または市町村教育委員会に2次調査を実施する予定である。2次調査の対象の学校あるいは市町村教育委員会が想定以上になる可能性もあるので、その結果を見ながら使途の変更も考えている。
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