巡回指導あるいはサテライト方式による通級による指導を実施しているいくつかの自治体を取り上げ、その仕組みや成果と課題を整理し、地域における通級による指導の望ましい在り方について検討した。 まず47都道府県及び20政令指定都市教育委員会を対象に、通級による指導における巡回指導あるいはサテライト方式の実施状況等についての質問紙調査を行った。その結果、回答を得ることができた30県14指定都市(回収率65.7%)のうち、巡回指導を行っているとの回答があったのは20県、2指定都市、サテライト方式による通級による指導を行っているとの回答が得られたのは6県、5指定都市であった。 次に、巡回指導又はサテライト方式の通級指導を実施していると回答のあった自治体のうち、岡山県、兵庫県、長野県において訪問調査を行った。具体的には、岡山県、岡山市、倉敷市、兵庫県、尼崎市、長野県、上田市、東御市の各教育委員会に対する聞き取り調査である。 その結果、岡山市では、限られた教室数で広域をカバーするための方策としてサテライト方式を取り入れていることが認められた。通級指導教室設置校とは別に地域拠点教室(サテライト教室)を設置し、担当教員が決まった曜日に地域拠点教室に出向いて指導を行っている。それに対して、兵庫県では巡回指導を実施することで、通級指導教室を設置していない小・中学校においても通級による指導を受けることが可能になる仕組みをとっていた。また長野県では、上田市の通級担当教員が週1日、東御市の通級指導教室を兼務するかたちで指導を行っていた。このように、これらの3県はいずれも、必要とする児童生徒に見合うだけの通級指導教室の新設や増設が難しい状況のなか、地域のもつさまざまな要因を考慮しながら、保護者の送迎が困難な生徒が通級による指導を受けられるようにするための仕組みを作っていることが認められた。
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