研究課題
全国の児童相談所の調査によると、障害を持つ子どもの比率は、全虐待相談の15.4%という報告がなされている。しかし、発達障害のみのデータはなくまた調査期間が短く確実な数値とはいえない。また障害種別では知的障害や自閉症児における性的虐待や、行動障害において身体的虐待の多いこと(Mandellら2005)も指摘されている。26年度は知的障害及び自閉症のある被虐待児の実態と予防・治療に関する文献調査、及び知的障害児入所施設における被虐待児の実態に関する予備的調査を行った。特別支援学校在籍児童生徒125名を対象にABC-J及び強度行動障害判定基準を実施したところABC-Jと強度行動障害判定基準の両者で入所児群の得点が統計的に有意に高いことが示された。特にABC-Jにおいては興奮性と無気力の項目において大きな差が見られた。今回の調査では被虐待との明確な関係は分析できていないが、今後プライバシーの保護に十分に留意しつつ、調査方法や項目を精錬し実態を明らかにするとともに27年度の調査及び支援研究につなげていきたい。
2: おおむね順調に進展している
計画通り調査が進捗している。本年度研究につなげるための学校・施設での事例研究、予防プログラムとしてのペアレントトレーニングも開始しており、継続環境は整えられてきている。
協力施設に対する訪問調査を行うことで、実態と支援、処遇上の工夫や問題点についてより具体的なデータを得る。具体的には、被虐待児童・生徒における行動障害の特性について(ABC-J;異常行動チェックリスト・CBCL子どもの問題行動チェックリスト)及びSP-J(感覚プローフィール)等のデータ、集団支援・個別支援の割合や内容、うまくいった支援、処遇上の課題などを分析する。また現在連携関係にある知的障害入所施設及び児が通う特別支援学校において、被虐待経験のある強度行動障害児数名について、行動障害に対するエビデンスのある機能分析(functional analysis Carr 1980)を用いた事例研究を行う。
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