研究課題
本研究は特に知的障害児童入所施設における被虐待児童生徒におけるアセスメントと支援方法について検討することを目的としている。初年度は、特別支援学校在籍児童生徒125名を対象にABC-J及び強度行動障害判定基準を実施したところABC-Jと強度行動障害判定基準の両者で入所児群の得点が統計的に有意に高いことが示された。本年度は、施設に対する聞き取り調査と虐待傾向や虐待を主訴として来談した母子事例について、認知行動療法による心理的支援を行った。その結果、聞き取り調査においては知的障害児童入所施設において、約半数の入所児童生徒が措置入所であり、契約入所の場合は虐待が疑われる事例から経済的理由、訓練的な入所まで多様なニーズがあり、職員は広範な対応を求められていることが示された。課題として行動障害に関連する客観的なアセスメントの活用、入所後の行動障害への対応と医療機関や学校、その他の専門機関との連携、18歳以上の生徒の次の生活の場所が見つけられないという実態も明らかになった。事例研究の結果、グループペアレントトレーニングに一定の効果を認めたが、個別支援を併用することの有効性が示され、セーフティネットの確認と形成、来談行動の強化、共感的態度、虐待的行為の背景要因に対する聞き取り、客観的なアセスメント、行動観察表など自己記録と具体的なフィードバック、母子並行介入の重要性が示唆された。最終年度においては以上の知見をもとに、協力施設において、アセスメントから特に支援システム、特に行動障害の治療と保護者支援に焦点を当て、支援モデルを構築するとともにその効果を検証していきたい。
2: おおむね順調に進展している
計画通り調査・支援プログラム開発、事例研究などが進捗している。本年度研究につなげるための施設との協力体制も確立しており、継続研究の環境は整えられている。
施設での実装研究においては、協力施設と綿密な連携体制をとり、個々の事例のプライバシーに十分な配慮を行い、大学医学部の倫理委員会の承認のもと、倫理規定に基づいて研究を推進する。被虐待児童生徒の実態と職員の支援ニーズ、施設での処遇環境の工夫や問題点についてより具体的なデータを得る。具体的には、被虐待児童・生徒における行動障害の特性について(ABC-J;異常行動チエックリスト)・(BCL子どもの問題行動チエックリスト)及び(SP-J感覚プロフィール)等を指標として行動障害に対するエビデンスのある機能分析(functional analysis Carr 1980)を用いたコンサルテーションを行い、その効果を検証する。、
予定していた施設調査について、調査先の都合変更により年度末調査が困難となり、旅費分を次年度に繰り越した。
平成28年度に当該予定の調査先での調査を行う予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件) 図書 (3件)
発達障害研究
巻: 37(4) ページ: 324-333
自閉症スペクトラム研究
巻: 12(2) ページ: 63-67
Yonago Acta medica
巻: 58(3) ページ: 109
小児の精神と神経
巻: 55(2) ページ: 129-142
精神医学
巻: 57(6) ページ: 419-429
Research in Autism Spectrum Disorder.
巻: 15 ページ: 60-68
精神保健研究
巻: 61 ページ: 49-56
子どものこころと脳の発達
巻: 6(1) ページ: 42-47
全国手をつなぐ育成会連合会
巻: 709 ページ: 28-29
精神療法(金剛出版)
巻: 41(2) ページ: 185-189
巻: 41(4) ページ: 498-504
精神療法(金剛出版)
巻: 41(4) ページ: 577-584
教育心理学年報
巻: 54 ページ: 173-180
次世代教員養成センター研究紀要
巻: 1 ページ: 75-81
電子情報通信学会技術研究報告
巻: 114(497) ページ: 41-43