研究課題/領域番号 |
26381328
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉田 ゆり 長崎大学, 教育学部, 教授 (20290661)
|
研究分担者 |
田山 淳 長崎大学, 教育学部, 准教授 (10468324)
西郷 達雄 長崎大学, 保健医療推進センター, 技術職員 (50622255)
鈴木 保巳 長崎大学, 教育学部, 教授 (90315565)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 発達障害 / 大学生 / アセスメント / スクリーニング / 尺度 / 支援システム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、発達障害学生支援に有用な包括的アセスメントシステムを構築することである。研究は大きく4段階で構成される。予備研究(尺度項目の精査)、スクリーニング尺度の開発(研究1)、スクリーニング結果の検証と支援ニーズのアセスメント、支援計画立案からの一貫したアセスメントシステムを構築し、支援の試行によりその妥当性・信頼性を検証する(研究3)である。 平成27年度年度の実績としては、平成26年度(2月~3月)に収集した250人の学生の検査(7種類)を、各検査の採点マニュアルに従って採点、入力し電子データ化した。マニュアル化されていないものは本研究の目的に合わせて採点表を作成し、入力した。そのうえで、検査結果を外観し、各検査ごとのカットオフ得点を定め、各支援度レベルを設定し、分析した。特徴的な検査結果については、詳細をさらに分析した。特にAQ-J(日本版自閉症スペクトラム障害尺度)結果と社交不安障害検査の結果は相関が高く、臨床的に指摘されていた社交不安障害との鑑別の難しさを実証した。本結果は特殊教育学会にて発表した。しかし、AQ-J、社交不安障害検査結果は、GPA得点との相関はなく、関連は見られなかったことを見いだした。現在もAQ-Jと他検査の相関を分析中である。 また、検査結果から発達障害の可能性のある対象学生のうち、同意を得られたものに対し、面接を開始、継続している。現在は、追加検査を行いながら縦断研究中である。研究開始当初より大学の障がい学生支援体制が整い、保健医療推進センターでの心理臨床的支援、大学窓口の対応、障がい学生支援室のコーディネートなど、支援に係わる変数が増えていることから、変数の整理を行いながら、支援効果の検証に向けて面接を行っている。最終的な目的である大学教育における発達障がい学生支援に有効なアセスメントシステムの構築に向けてすすめている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度の研究として、まず、26年度に構成した既存尺度によるテストバッテリー(7検査)(26年2月~3月に実施)の結果の分析(250人)を主に行った。特徴的な検査結果については、検査間の関連等を含めて詳細な分析をし、計画通りに進行することができた。これにより、発達障害の可能性のある学生10名を抽出することが出来た。予定通り、同意を得られたものから順次面接を開始している。面接の同意を得られなかった学生も特定が出来ているため比較検証群の構成(比較検証の同意は得ている)もできた。これらの研究は計画通り順調にすすんでいる。 現在研究2から3の段階に入り支援の試行及び効果の検証段階に入るところであるが、28年4月の障害者差別解消法試行を前に、26年の研究開始時より障がい学生支援体制が飛躍的に進んだ。よって学内の支援体制が変化し、対象学生がすでに保健医療推進センターでのフォローアップ対象、心理臨床支援となっていたり、障がい学生支援室でのコーディネートを受けていたりすることから、本研究の面接を中心とした支援のみの効果ではなく、こうした関連の深い変数による好ましい変化をも検証の対象とすることが必要であると考えられ、複合的な支援効果の検証が必要になっている。よって、現在変数の見直しや研究協力体制の見直しをはかりながら面接を行っている。 一方で、なんらかの支援を受けていない学生も潜在していることが考えられるため、追加検査を実施しているところである。現在50名の検査協力者を得て、順次入力し、面接対象者を絞り込む作業を並行中である。これらのことから、研究の深化、信頼性の確保に努め、全体には順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
テストバッテリーによる質問紙調査については、追加調査を行っているため、入力・分析を早急にすべくすすめている。必要に応じてさらに追加調査を行う。 AQ-Jを軸にした検査間の関連からは、これまで教育経験的・臨床的に言われてきた、社交不安障害等との鑑別の重要性や大学生活における困り感、適応感との関連などを明らかにすることも研究の深化につながると考えられるため、各分析結果ごとに、日本特殊教育学会等での学会発表等でまとめていくことを検討している。各結果を論文することも計画している。 一方で面接研究については、12名を特定し順次面接を開始しているが、今後数名の研究協力者を増加する予定である。 発達障害の特性そのものが個別性が高いうえ、また新しい変数(学内の障がい学生体制の進歩)により予期されなかった実験変数が増えているため、それらの進み具合、学生の受け止め方、GPAなどを用いた効果の検証のために、面接に係わる体制、研究協力者を増やすなど研究体制の見直しを図りながら計画的に進める予定である。特に障がい学生支援室、保健医療推進センターに所属する研究者を研究協力者として、データの提供を受けたり、情報共有できる体制とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に、より信頼度の高い支援効果の検証をおこなうため、質問紙調査の追加を計画している。理由としては、当初計画から実験変数に変化があったため(障がい学生支援体制の充実)、変数を再確認しての面接調査対象者の拡充が必要なため。 さらに、特に旅費に関して、最終年度に学会発表等を集中的に行うため。
|
次年度使用額の使用計画 |
質問紙調査の追加のための質問紙(7種)の購入、その結果の入力・分析のための人件費(謝金)、旅費については学会における情報収集2回(東京、札幌)、ポスター発表1回(新潟)の計3回計画している。その他分析に必要な物品の購入、学会発表に伴う物品の購入を計画している。
|