研究実績の概要 |
本年度は,次年度の高機能ASDの女性に特化した自己マネジメント・プログラムの作成およびグループでの実施に向けて,女性のASD症状や症状への気づきについて調査した。 (目的)ASDの成人女性の特性を調べるため,ASDの成人男性との比較を通して女性のASD症状や自己認知について検討する。 (方法)参加者:IQ85以上の正常知能でASDの診断をもつ18歳以上の男女60名:ASD男性41名(age:30.90±8.32,FIQ:108.49±13.33),ASD女性19名(age:31.74±8.00,IQ:105.74±11.02)。手続き:本人への半構造化面接であるADOS(Autism Diagnostic Observation Schedule),親面接で幼児期の症状について尋ねるADI-R(Autism Diagnostic Interview- Revised),自己記入式の質問紙AQ(Autism-Spectrum Quotient)を用いて,幼児期からのASD特性と客観的にみた現在のASD症状およびその自覚の関係を調べた。ASD症状の二次的障害を調べるため,対人不安をLSAS, 抑うつ度をCES-D,生活の満足感をWHO-QOL24,生活全般の機能をGAFによって調べた。 (結果)有意差がみられたのは,ADOSの意思伝達(M:3.54±1.25,F:2.84±1.21,p<.05, d=.56)とアルゴリズム総合点(M:10.95±2.70,F:9.42+2.27, p<.05, d=.59),ADI-Rの相互的対人関係(M:13.41±6.49 ,F:9.75±3.61, p<.05, d=.65),意思伝達(M: 10.34±4.87,F:7.19±3.17, p<.05, d=.73),36か月までに顕在化した発達異常(M:2.45±.78,F:1.50±1.10, p<.01, d=1.05),いずれも男性に比べ女性の値が低かった。他の指標に有意差はみられなかった。 (考察)専門家や親の評価は女性のASD症状は男性よりも軽いことを示唆したが,ASD症状に対する自己評価には差がなく,客観的にみえる女性の症状は軽いにもかかわらず自覚される症状レベルやASD症状による困難感は相対的に強いといえる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の使用計画は、グループ実施に必要な感情コントロールに必要なキットやファイルの購入や検査類の購入に予定額140,000円と昨年の余剰金89004円を合わせて使用する予定である。それ以外の支出予定としては,情報収集や学会発表の旅費580,000円,謝金90,000円、その他通信費などに90,000円使用予定である。
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