本研究では、通常学校に特別支援学校分校を共生・共育の場として積極的に設置してきた静岡県の事例を中心に、(1)障害児教育における特別支援学校の分校・分教室の設置の歴史的経緯、(2)共生・共育推進の視点からの交流及び共同学習の実施、(3)静岡県の特別支援学校分校の教育の実態、(4)神奈川県・大阪府・埼玉県等の分校・分教室の実態、(4)インクルーシブ教育の観点からみた今後の共生・共育の方向性等について、地域性・共同性・専門性の観点から多角的・批判的に分析した。 平成28年度は、通常学校と併設の特別支援学校分校から独立し本校化した学校を対象に、その経緯や分校時代との比較検討を行った。分校の在籍者数の増加に伴う施設の狭隘化、学校経営の効率化、地域支援の強化等の要因が想定されるが、特別支援学校の地域化の理念が背景にあった。交流及び共同学習は分校時代と基本的に変わらず継続されていた。また、通常学校と併設の市立特別支援学校本校の現状と課題について聴き取り調査を行ったが、設置者が同じ市立であることから、施設の共同利用も円滑に実施でき、活発な交流活動が展開されていた。 本研究の結語として、通常学校併設の特別支援学校分校・分教室の交流及び共同学習の実態に基づき、インクルーシブ教育の観点から共生・共育のあり方について地域性・共同性という視点から地域化をキーワードに論述した。 最終年度の総括として、日本特殊教育学会で開催した自主シンポジウムにおける話題提供を中心に研究協力者の執筆による論文を最終成果報告書に掲載し、公表した。
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