本研究の目的は、大学生を就業に対するレディネスでセグメントし、セグメントに応じた「プロアクティブ(予防的)」な支援モデルを構築することである。そのために、「セグメント基準の検討」→「セグメントに応じた支援プログラムの構築」→「プログラムの実施と効果検証」のサイクルで継続的な実証研究を行っている。 最終年度の本年度は、これまでに有効性が示された支援モデルをカリキュラム・マネジメントの視点から検討し、運営上の課題を明らかにすることを目的に研究を進めた。 まず、低回生向けプログラムの教育効果を、従前の量的分析に加えてテキストマイニング分析(受講生コメントの時系列データ)を用いて検証した。これにより、プログラム全体だけでなく「単元」ごとの変化や、運営方法に対する個人の解釈や志向性(親和性)なども明らかになり、横展開時の課題について有益な示唆が得られた。 次に、カリキュラム導入時の課題について、カリキュラム評価の外部要因(担当教職員の質と量等)の点から検討した。 先行研究をもとに、キャリア支援担当者アンケートの二次分析やインタビュー調査を実施した結果、大学におけるキャリア教育は、様々な要因により「授業科目」の普及が優先され、誰が教えるかという「キャリア教育担当者の質(固有の専門性)」についての議論が進んでいないことが明らかになった。これは、大学組織は、初等中等教育に比べてマネジメント(教員体制・設備・組織ガバナンス)における自由度が高いにも関わらず、キャリア教育について、初等中等教育と接続した「授業科目(内容・方法)」としての議論しかなされてこなかったことが要因だと考えられた。 今後、プロアクティブな支援モデルの導入と共に、キャリア教育担当者の質(固有の専門性)についても継続課題として研究に取り組んでいきたい。
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