研究課題/領域番号 |
26381345
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
松村 暢隆 関西大学, 文学部, 教授 (70157353)
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研究分担者 |
柘植 雅義 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 教授 (20271497)
西村 優紀美 富山大学, 保健管理センター, 准教授 (80272897)
小倉 正義 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (50508520)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発達障害 / 学習困難 / 認知的個性 / 才能 / 高大接続 |
研究実績の概要 |
発達障害・学習困難生徒学生への特別支援の高大接続の在り方に関して、多方面の視点から基礎的調査、資料収集、プログラム実施を行った。1.発達障害と才能を併せもつ2E生徒への支援について、カナダの中等学校の特別プログラム等への訪問調査を行った。日本でも実施の可能性のある指導・学習方法に関する示唆が得られた。また通常学級でのユニバーサルデザインで発達障害生徒を含む全生徒の認知的個性を活かすため、生徒のMI(多重知能)を含む認知的個性の把握およびそれを活かした総合学習・教科授業の開発を中学校と共同で進めた。2.高等学校における発達障害やその周辺の生徒の理解や指導支援、さらには学校としての特別支援教育の推進に関する現状や、高大接続に係る現状を把握するために、公立高等学校3校を訪問し、施設設備の把握や、特別支援教育推進の基本的な考え等も含め、特別支援教育コーディネーターにインタビュー調査を行った。3.発達障害のある高校生を対象に大学体験プログラム「チャレンジ・カレッジ」を実施した。参加生徒からは、「得意な分野を念頭に進路を決めるとより良い大学生活を送れることがわかった」「発達障害のある先輩からの話が参考になった」等の感想を得た。発達障害の特性に沿った体験型プログラムの有効性を確認することができた。4.徳島県内の高等学校で、支援が必要な生徒についての教育相談を行いながら、平成27年度以降に発達障害など支援ニーズのある生徒へのキャリア教育に関する実践的な研究を行うための準備を進めた。また鳴門教育大学や他大学の研究協力者と協議し、大学教員の発達障害学生への支援に関する意識調査の計画も含め、支援の在り方を検討するための準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、3年計画の研究の初年度として、基礎資料を収集して、今後調査や実践を実施する計画を検討するのが目的であった。その観点からは、研究者間の検討会も実施され、目的は概ね順調に達成されてきたと言えよう。具体的な研究の点では、データ収集を伴う調査やプログラムで利用する冊子作成が理想的には実現できなかった面もあるが、代替の基礎的調査・資料収集と計画改善により、次年度の研究に順調に繋げられるものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に着手した、発達障害・学習困難生徒学生への特別支援の高大接続の在り方に関する基礎的調査、資料収集、プログラム実施の結果を分析して、それらのより具体的な展開を図る。1.発達障害と才能を併せもつ2E生徒への支援に焦点を合わせ、教師の意識調査や2E生徒のニーズの基礎調査等、学習意欲を高める実証的研究を進めて、狭義の2E教育(2E生徒の通級指導教室等)と広義の2E教育(発達障害生徒の得意・興味を活かす)として実施可能なプログラムの在り方を探る。発達障害生徒の認知的個性を通常学級で活かした授業の開発も継続させる。2.教師の意識調査については、本年度の取り組みを踏まえて、次年度は、対象校の教員向け質問紙調査を検討し、実施に向けた準備を行う。一方、生徒の意識調査については、対象校の生徒向けのゼミナール「障害科学(仮称)」を開講し(希望者に対して1回)、その活動の中での発言から意識を把握する。3.発達障害のある生徒の進路に関する調査を行い、①大学進学に必要な情報、②進路指導の在り方、③保護者への指導の在り方についての情報を集約し、チャレンジ・カレッジのプログラムに反映させていく。「大学体験プログラム」に必要なプログラム内容、企画側の注意点などを冊子にしてまとめ、どの大学でも実施できるようにする。4.徳島県内の高等学校で当該高等学校の教職員とともに、発達障害など支援ニーズのある生徒へのキャリア教育をすすめるための支援システムの検討を行う。また、大学教職員の発達障害など支援ニーズのある学生への支援に関する意識調査を行いつつ、鳴門教育大学での発達障害学生への支援システムの構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学体験プログラムに必要な生徒向けの冊子を作成する予定であったが、「チャレンジ・カレッジ」に参加した生徒はすべて保護者を通じて集まったため、高等学校がもつニーズを知ることができず、冊子に情報を盛り込むことができなかった。次年度に、補足資料を収集して、高等学校教員および保護者の希望を盛り込み、より充実した冊子を作成して体験プログラムを実施するために、当該計画に関わる費用を次年度回しとした。
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次年度使用額の使用計画 |
「チャレンジ・カレッジ」に関して、①高等学校特別支援教育巡回相談員への聞き取りと高等学校へのアンケートを実施する(謝金・印刷費)。②親の会(保護者)への聞き取り・アンケートを実施する(消耗品費・印刷費・通信費)。③生徒向けの「しおり」(冊子)を作成する(印刷費)。④チャレンジ・カレッジを実施する(学生アルバイト人件費・消耗品費・印刷費)。
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