本研究の目的は、学校等でより簡便に使える実行機能チェックリスト(Executive Function Checklist: EFC)を開発し,それを学習支援に活用していくための枠組みを提供することである。29年度においては,まず,28年度末に実施した本調査のデータ入力・整理を行った。その後,以下の3つのことを実施した。①小学校、中学校の通常の学級にいる児童生徒1790名と発達障害傾向のある児童生徒406名のデータから、EFCの内容と構造,妥当性の検討を行った。結果,因子分析によりEFCの基礎レベルの3因子と応用レベルの4因子を予想通り抽出することができた,また,学習と行動のつまずきに関わる既存のチェックリストとの関連性を調べたところ,EFCは学習と行動に対して異なる影響を与えるいくつかの成分を有していることがわかった。さらに,EFCの基礎と応用の階層モデルについて検証した結果,高い適合度を得ることができた。②開発したEFCを学校で活用学校等で活用するための標準得点並びにその変換ソフトを作成した。併せて,発達障害傾向のある児童生徒の特性について明らかにし,標準得点の臨床的妥当性を検討した。③EFCによるアセスメントや学習支援に役立てるために,発達障害のある児童生徒の学習のつまずきに焦点を当てて,学習―実行機能間の汎用因果モデルを検証した。また,このモデルから実行機能の困難さが学習のつまずきを引き起こすメカニズムや支援における留意点等について検討した。29年度は,研究の最終年度として以上の3つのことをまとめ,チェックリストを完成させた。
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