研究課題
本研究課題では重要な2つのプロセスとして粒子界面へのフォトクロミック分子の導入と、金(Au)ナノロッドと光学活性物質との相互作用によるキラル組織体の形成である。平成27年度までにフォトクロミック架橋分子としてリポ酸修飾スピロピラン誘導体の合成に成功した。これらの事を踏まえて、平成28年度に実施した研究成果の概要は以下の通りである。1.リポ酸修飾スピロピラン誘導体のAuナノロッドへの導入とその光応答性組織体リポ酸修飾スピロピラン誘導体(SP1)溶液とAuナノロッド溶液とを室温で1時間静置させることで、粒子界面への導入が吸収スペクトルによって確認できた。この際、スピロピラン導入Auナノロッドは分散状態であった。その後、紫外光を照射した結果、Auナノロッドの長軸側に関する表面プラズモン共鳴(LSPR)に起因する吸収帯の長波長シフトが観測された。更に、電子顕微鏡観察によってend-to-end型組織体が構築されていることが分かった。これはスピロピラン導入Auナノロッド組織体が光応答性を有する事を意味する。2.タンパク質を利用したキラルなAuナノロッド組織体の形成Auナノロッド溶液に多様性を有するタンパク質を添加した所、表面プラズモン共鳴に起因する吸収帯の明らかな変化が観測された。特に、アルブミンタンパク質の場合においてLSPRピークの短波長シフトが見られた。この短波長シフトはAuナノロッドのside-by-side型組織化を意味し、電子顕微鏡観察結果もこれを支持した。ヒト血清アルブミンを添加した時の円二色性(CD)スペクトルは最も大きな光学活性を示した。用いたAuナノロッドはカチオン性界面活性剤によって保護されている為に、この組織化には静電的相互作用が1つの要因であると示唆された。この結果からタンパク質によるキラルなAuナノロッド組織体の形成が可能である事が明らかとなった。
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Chemical Communications
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Chemistry Letters
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Bulletin of the Chemical Society of Japan
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