研究課題/領域番号 |
26390005
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研究機関 | 株式会社コンポン研究所 |
研究代表者 |
早川 鉄一郎 株式会社コンポン研究所, その他部局等, 研究員 (90557745)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酸化バリウム / NOx吸着 / X線吸収分光 |
研究実績の概要 |
本研究を開始するにあたり、測定対象とする酸化バリウムクラスターを得るために既存のクラスター生成装置(マグネトロンスパッタ装置)の改良を行った。スパッタ用のターゲットとして金属バリウムは反応性が高すぎて使用できないため、化学的に安定な酸化バリウム(絶縁体)をターゲットとして用いる。絶縁体ターゲットをスパッタするためにはマグネトロンをこれまで使用していた直流駆動から交流(RF)駆動へと変更する必要がある。 この改良のため、スパッタ用RF電源および自動インピーダンス整合器を購入した。購入に先立って、デモ機による動作テストおよび機種選定を行った。スパッタ用ターゲットとして、直流駆動でクラスター生成実績のある金属セリウムを用いた。その結果RF駆動でもセリウムクラスターの生成が確認されたが、イオン強度やサイズ分布は直流放電に比べて劣っており、最適なクラスター生成条件が直流駆動に比べて著しく異なっていることが示唆された。 電源購入後に酸化バリウムをターゲットとしてクラスター生成テストを開始した。RF放電に改良したことにより、絶縁体ターゲットに対しても帯電などの影響なく安定した放電が得られることを確認した。その後、マグネトロンの磁場強度や放電ギャップ、ガス導入条件、放電電力などクラスター生成条件の最適化に向けたテストを開始した。 また27年度に開始する予定のクラスター反応測定の準備も行った。クラスター反応測定はイオントラップ中に微量の反応ガスを導入して反応生成物を検出することにより行う。そのための反応ガス流路の設計を行い、配管系の準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RF電源および自動整合器は購入前にデモ機でテストすることにより、既存のクラスター生成装置と整合した製品を導入することができ、導入後も問題なくクラスター生成テストを開始することができた。しかしRF放電によるクラスター生成では直流放電と比べてクラスター生成条件が著しく異なっており、測定に必要な強度のクラスターを得るためのテストに予定より時間がかかっている。このことが研究計画からの遅れの原因となっている。ただし放電そのものは安定しており、電源の容量にも余力があることから、クラスター生成条件を最適化して必要な強度の酸化バリウムクラスターを得ることは十分可能である。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っているクラスター生成条件の最適化を継続し、測定に必要な強度の酸化バリウムクラスターを得る。それと並行して昨年度に設計した反応ガス流路の製作などを行い、クラスター反応測定の準備も進める。 X線吸収分光測定は予定通り高エネルギー加速器研究機構(KEK)にある放射光施設Photon Factory (PF)の実験ステーションBL-7AもしくはBL-2Bを利用して行う。今年度は6月、11月、2月にビームタイムを予定している。酸化バリウムクラスターの生成が6月のビームタイムに間に合わなかった場合でも、11月、2月のビームタイムで研究の遂行は可能である。クラスター反応測定はクラスター強度が得られ次第、予定通り進めていく。 本年度予定しているAg添加酸化バリウムクラスターの生成テストも実施する。Ag添加はクラスター搬送部に金属蒸発源(兼ガスセル)を挿入して、酸化バリウムクラスターにAg原子を付着させることにより実現する計画である。もしこの方法で十分な強度のAg添加クラスターが生成できない場合には、マグネトロンで酸化バリウムとAgを同時にスパッタする方法を試みる。さらに計画では来年度に行う予定のハロゲン付加クラスターの生成を前倒しして行うことも検討する。これらの対応策により、酸化バリウムクラスターにおける異元素添加の効果について調べる計画を進めていくことが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
RF放電に必要なケーブル類が電源購入価格に含まれたことなど購入品価格交渉の結果、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
反応性測定用のガス流路や関連消耗品などの価格が不確定な物品の購入に充当する。
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