本研究では、ワイドギャップ半導体とナローギャップ半導体を組み合わせたCaTe/PbTe、 EuTe/PbTe及びSrS/PbS量子井戸のバンド間遷移を利用した波長3~6ミクロン領域のバンド間遷移レーザとEuTe/PbSnTe量子井戸を用いた波長25-50ミクロンの未開拓波長域のサブバンド間遷移量子カスケードレーザの研究を行なってきた。波長3~6ミクロンの広帯域チューナブル面発光レーザの研究では、SrS/PbS量子井戸系で外部共振器面発光レーザ動作したがスペクトル幅が広いという問題があった。PbTe系レーザではPbS系レーザに比べてレーザ動作しづらく、ダブルへテロ構造(DH)、分離閉じ込め型(SCH)における光励起端面発光動作により特性評価を行なった。端面発光レーザ動作においてもPbS系レーザはPbTe系レーザより容易に動作した。室温付近までスペクトル特性の良いレーザ動作を得るには高熱伝導率基板上へのレーザ構造の成長と微小キャビティ化による連続動作が必要であることが分かり、Si基板上への薄膜の高品位エピタキシャル成長を行い、SrS/PbSレーザにおいては光励起動作において室温パルス動作に成功した。PbTe系レーザにおいてもレーザ動作が得られたが、現在のところ動作温度は200K以下と低い。EuTe/PbTe系レーザに比べてCaTe/PbTe系レーザのほうが発光しやすいこと、Si基板上へ高品位に作製できることが分かった。未開拓波長域の量子カスケードレーザへの応用では、EuTe/PbTe系レーザでは必要な低キャリヤ状態を安定的に得られないことが分かり、PbSnTe中のIn不純物準位を利用したEuTe/PbSnTe:In量子カスケードレーザ構造を提案した。レーザ構造は封管気相成長法により作製したPbTeSe格子整合基板上へ成長を行ったが、現在のところレーザ動作には至っていない。
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