研究課題/領域番号 |
26390010
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
出口 博之 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30192206)
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研究分担者 |
田尻 恭之 福岡大学, 理学部, 助教 (90441740)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二次元量子スピン反強磁性体 / ナノスケール微粒子 / 磁気エッジ効果 / 電子スピン共鳴 |
研究実績の概要 |
ESRの温度可変装置と既存の備品であるESRスペクトロメータを用いた低温域でのLa2CuO4およびLa2-xSrxCuO4(x=0.15)ナノスケール微粒子のESR測定を行った。スペクトルの温度依存性を詳しく調べた。低磁場において、La2CuO4微粒子では非常にg値の大きなスペクトルが観測され、ナノスケール粒子特有の振る舞いが観測された。 La2CuO4ナノスケール微粒子およびLa2-xSrxCuO4(x=0.15)ナノスケール微粒子試料について透過型電子顕微鏡による観察を行った。その結果、メソ多孔体SBA-15中に合成された当該微粒子が観測され、粉末X線回折によって算出した平均的な粒子サイズ(27nmおよび15nm径)に近い粒径が見積もられた。 La2CuO4ナノスケール微粒子のESRスペクトルの解析を行った。測定されたスペクトルは全温度範囲において4つのローレンツ型スペクトルの和で再現できることが、判明した。4つのスペクトルのうち、1つは、不純物イオンによるもの、2つはLa2CuO4のバルク試料で観測されるもの、残りの1つが、異常に大きなg値をもつ成分である。これらのスペクトルのg値、半値半幅、強度等の温度依存を詳しく調べた。 昨年度は磁気測定よりバルクの試料と比較してLa2CuO4ナノスケール微粒子は異常に大きな磁気モーメントを有することが明らかになった。今年度は、ESR測定により異常に大きなg値をもつ成分が発見され、磁気測定による大きな磁気モーメントが異常に大きいg値をもつスペクトル成分に対応することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した研究の目的および平成27年度の研究実施計画に沿って研究が進んでいる。研究対象のLa2CuO4ナノスケール微粒子および比較対象としてのLa2-xSrxCuO4(x=0.15)ナノスケール微粒子の透過型電子顕微鏡による観察、低温領域でのESR測定、ESRスペクトルのデータ解析が進んだ。その結果、昨年度の磁気測定での新規な磁性について、対応するESRスペクトルが見出された。また、Srドープ系微粒子とのスペクトルの違いも明らかになった。よって、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
La2CuO4のナノ粒子のエッジ効果のサイズ依存性を磁気測定およびESR測定の両面から調べて、新規な磁性の起源を明らかにする。そのため細孔径の異なるにSBA-15を用いて合成した粒子サイズの異なるLa2CuO4のナノ粒子を試料として実験に用いる。ナノスケール粒子の磁化率の温度依存および磁化過程の測定を行い、試料全体の磁性を評価して磁性のサイズ依存を調べる。またLa2CuO4ナノ粒子のCu2+のESRスペクトルの温度・サイズ依存を調べてエッジ効果および新規磁性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたLa2CuO4のナノ粒子の磁気測定が、試料作成の遅れにより、測定回数が少なくなり、予定より液体ヘリウムなどの寒剤費用は少額になった。また、実験補助の謝金等も必要でなくなったことにより支出が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
サイズの異なる微粒子の作成が完了し、前年度にやり残した磁気測定および電子スピン共鳴測定を行う。そのために必要な液体ヘリウムなどの物品費や実験補助の謝金を多く使用する。また、研究成果の発表するため、学会や研究会への旅費を多く支出する。
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