研究課題/領域番号 |
26390011
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松井 利之 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 教授 (20219372)
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研究分担者 |
岩瀬 彰宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60343919)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 磁気改質 / イオンビーム照射 / 磁気パターニング / X線磁気分光 / 一次磁気相転移 / 金属間化合物 |
研究実績の概要 |
初年度は,計画書記載の通り,1.高品位なFeRh薄膜の合成,2.イオンビーム照射実験の実施,3.照射後の磁気プロファイル及び構造の評価を実施した. 1.の項目については継続的に高品位な薄膜試料の合成を目指した取組を進め.A1相がほとんど含まれない,薄膜の合成に成功した.購入を予定した放射型温度計は予備的な実験により正確な測定が困難であることが判明したため,直線導入期の使用による直接計測法により基板温度の測定を精密に行うこととした.これにより精緻な基板温度制御が実施でき,品位の高い薄膜試料を継続的に作製することが可能となった. 2.の項目については,日本原子力研究開発機構高崎のイオン照射設備を用い高エネルギーイオンビーム照射実験を実施した.特に,クラスターイオンビーム照射実験を新たに開始し,最表面層の磁気改質に効果的に作用することを見出した,(国際会議にて成果報告)また,若狭湾エネ研や共同研究先企業の照射設備を利用し,深さ方向への磁気改質に関する系統的な実験を実施し,知見を集めることができた. 項目3の実験については,SQUID磁力計などを用いた磁性評価に加え,高エネ研のビームラインを用いた,XMCD実験を実施し,最表面層の磁性評価に関して知見を集めるとともに,3次元磁気改質の評価手法に関してその一手法を確立し国際会議での成果報告を実施した. 以上のように,研究初年度の成果として,3次元層間交換バイアス発現に向けて,イオンビーム照射を用いた多様な磁気改質の手法を,定量的に把握することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね順調に進捗している.一部の項目では年次計画を前倒しにして3次元磁気構造作製に向けた取り組みを進めることが出来ている.一方で,その磁気プロファイルの深さ方向分布測定実験が,ビームタイムの調整から27年度4月当初にずれ込んだことなどから,概ね順調に進展していると自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に記載のとおり,2年度目にはこれまでも取り組んできた2次元磁気パターニング技術をより確かな技術として確立させ,層間交換結合膜の作成を目指した取組を進める予定である.合わせて,計画には記載されていないが極めて重要となる3次元磁気構造の作製と評価に関するアプローチも実施することとする.これにより,より効果的な層間交換現象を導き,デバイス応用へと繋ぐ取り組みを展開する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
備品の購入計画について,当初計画した手法では効果が得られないことが判明したためこれを見送り,既存物品を活用することでそれに見合う効果を得た.これにより備品購入費が減額し,一方で外部機関での実験回数および成果報告に伴い旅行回数が計画以上となったためその一部を旅費に流用したものの,最終的に物品費に余剰金が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
発生した余剰金は,10万円以下の比較的小さな金額であり,当初計画を進めることで物品購入費または旅費として使用することが可能である.
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