キャリアドープしたグラフェンを加工して、プラズモンによる光学応答の制御を目的としている。 最終年度は第2高調波発生とフォトンドラッグ効果について解析し、前年度から抱えていた問題を解決した。まず、グラフェンのキャリアを外部電磁場と結合する2次元電子系として 古典論で定式化した。その上で電流密度を電磁場に対する摂動で求め、線形の光学伝導度や2次の非線形光学伝導度の解析的な表式を得た。これを Dirac 電子の量子論に対応原理で翻訳し、グラフェンにおける非線形光学伝導度の簡便な表式が得られる。特に2次の非線形応答は系の反転対称性を反映し、電場と電場の微分の積で書ける。これにmonotonic な外部電磁場を仮定すると、電流密度における ACとDCの項が生じ、各々、第2高調波発生とフォトンドラッグ効果を記述する。 free-standing なグラフェンの場合、これらの効果は小さい。しかし、グラフェンを回折格子上に置き、近づけていくと、その効果は変調されたプラズモンによって数千倍にまで増強する。回折格子によって変調されたプラズモンはフォトニック結晶の場合とよく似たバンド構造をもつ。そのため、フォトニック結晶でよく知られた群速度の遅延効果や局所場の増強効果がグラフェンプラズモンにおいても生じ、非線形光学応答の増強が得られる。 以上をRCWA法を拡張した電磁場の数値計算によって解析し、第2高調波発生やフォトンドラッグ効果の特徴的なスペクトルや、後者の方向依存性を明らかにした。
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