研究実績の概要 |
半導体量子ドット(QD)は太陽電池の増感剤として、従来の色素増感剤を凌駕する特徴がある。本研究は半導体QDの異なる基板結晶面への吸着と、光励起後の光誘起電子移動を明らかにすることである。本年度は以下の3項目について研究をおこなったので、各研究実績について報告する。 (1)対象とする基板はルチル型TiO2単結晶を適用し、基板を該当溶液に浸漬してCdSe QDの吸着を行った。高感度な光吸収評価が可能な光音響分光法を適用し、各基板結晶面におけるCdSe QDの浸漬時間依存性を検討した。その結果、(111)面では(110)面,(001)面と比べCdSe QDの成長が速かった。またスペクトル形状から平均粒径の導出を行った結果、平均粒径は結晶面に依存しないことが判明した。同じくスペクトル形状からCdSe QDの結晶性の評価を行った所、(001),(110),(111)の順で高いことが判明し、結晶成長速度の場合とは逆の傾向が見られた。 (2)対象とするTiO2の各基板結晶面とCdSe QDのHOMO準位を光電子収量分光法により評価を行った。その結果両者とも(111),(110),(001)の順でHOMO準位が高いことが判明した。CdSe QDのHOMO準位は作製時の浸漬時間には依存しなかった。 (3)過渡回折格子法を適用し、光誘起電子移動の評価を行った。その結果、電子移動に伴う自由エネルギーの変化に対して、電子移動速度定数は(111),(110), (001)の順で大きいことが判明した。この事実は、(111)面ではTiO2の伝導帯の波動関数と、CdSe QDのLUMO準位の波動関数の重なり積分が、他の面方位に比べて大きいことを示唆している。
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