研究課題/領域番号 |
26390017
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
加藤 信哉 三重大学, 生命科学研究支援センター, 助教 (40545547)
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研究分担者 |
吉村 哲郎 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任教授(研究担当) (30035472)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フラーレン / 放射線増感剤 / がん細胞 |
研究実績の概要 |
フラーレンは低毒性の放射線増感剤としての可能性があるが、ほぼ未開拓である。我々はフラーレンの水溶性誘導体 Polyhydroxy small gap fullerenes (SGFs: Sigma-Aldrich Co.LLC.)を用いて、50 mM DOPC/DOPS (7:3) 多重層リポソーム (Lpsm)に5 mM SGFsを内包させ (LpsmSGFs: 50 mM DOPC/DOPS = 7:3, 246 μM SGFs, Diameter = 141.2 nm, ζ-potential = -35.65 mV)、ヒトメラノーマ細胞に投与して放射線増感効果を調べた。X線照射後の細胞増殖度を細胞内ミトコンドリア脱水素酵素の活性に基づくWST-8法により測定し、ミトコンドリア膜電位の変化をRhodamine123により評価した。細胞内活性酸素 をDihydroethidiumの蛍光により検出するとともに、DNA酸化損傷を8-OHdG免疫染色により蛍光観察した。またSGFs水溶液にX線照射を行った場合の酸化還元電位 (ORP)を測定した。LpsmSGFs投与後のX線照射により、ヒトメラノーマ細胞の細胞増殖度は投与量依存的に低下し、Lpsm単独投与ならびに遊離SGFsを有意に下回った。ミトコンドリア膜電位に対応する蛍光強度 (Rhodamine123)は、X線照射なしではLpsmSGFs投与と無投与でほぼ同じであったが、X線照射後にはLpsmSGFs投与で蛍光強度が上がり、一方、無投与では低下した。またLpsmSGFs投与では、X線照射後の細胞内活性酸素を示す蛍光強度 (Dihydroethidium)が増加し、またDNA酸化損傷も検出された。SGFs水溶液にX線照射を行った場合、8 GyまでORPは上昇し、それ以上の照射線量では低下した。リポソームに内包することで、高濃度のフラーレンを細胞内に送達することが可能となり、LpsmSGFsの放射線増感効果は、多数の-OHが結合した水酸化フラーレンで-OHの一部がラジカル化するなどフラーレンが介在する酸化ストレスが寄与している可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フラーレンを内包するリポソームを調製し、その放射線増感効果を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果について、学会発表および論文投稿を行う。 水酸化フラーレン (Polyhydroxy small gap fullerenes: SGFs)について、SGFs存在下での活性酸素生成を化学発光法により測定する。ヒトメラノーマ細胞 (HMV-II)に加えて、ヒト舌癌細胞 (HSC-4)などでも試験したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展が順調で、試行錯誤が比較的少なかったため、予算残が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究に必要な機器のパーツ(蛍光フィルターなど)などを検討している。できれば電子スピン共鳴装置やタイムラプス培養観察顕微鏡を購入したいと考えている。
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