研究課題/領域番号 |
26390023
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
増尾 貞弘 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (80379073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 量子ドット / PbS / 単一分子計測 / 単一光子 / 光子アンチバンチング / 太陽電池 / 多重励起子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「半導体量子ドット(QD)内で起こる多重励起子生成・緩和過程」を評価する新しい測定法を確立することである。QD内で起こる多重励起子生成・緩和過程は、太陽電池のエネルギー変換効率の飛躍的な向上につながる重要な過程であるが、評価法は過渡吸収に限られている。本研究では、「光子アンチバンチング測定」を駆使し、多重励起子生成・緩和過程を単一QDレベルで評価する新しい測定法を確立する。これにより、多重励起子生成・緩和を支配する因子を解明し、高効率太陽電池創製へ向けた基礎的知見を得ることが本研究のねらいである。光子アンチバンチング測定を駆使し、QDにおける多重励起子生成・緩和過程を評価するためには、生成過程と緩和過程を別々に評価していく必要がある。今年度はまず単一多重励起子緩和の評価に集中し、以下の項目を検討した。 1. 硫化鉛(PbS)QDの合成:太陽電池への応用を考えた場合、紫外から近赤外領域に吸収を有するPbSQDは太陽光を効率よく吸収可能であるため、理想的なQDである。そこで単一PbSQDの多重励起子緩和を評価するため、PbSQDの合成を行った。合成時の濃度、および温度を制御することにより、800 nmから1200 nmに吸収末端を有するPbSを合成可能であることを確認した。 2. PbSQDの表面保護基の置換:多重励起子生成・緩和過程に対する表面保護基の影響を検討するため、異なる保護基を有するPbSの作製を行った。オレイン酸のほか、KSCN等による保護基置換を行い、保護基の種類と蛍光強度の相関についても検討した。 3. 単一PbSQDの発光特性評価:光学顕微鏡下において、単一PbSQDの蛍光検出が可能かどうか検討した。これまでの報告では、近赤外に特化した光検出器を用い単一PbSの評価が行われていたが、一般に使われる光検出器でも単一PbSの蛍光検出が可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画通り、PbSQDの合成、PbSQDの表面保護基の置換、単一PbSQDの発光特性評価まで遂行することができた。 PbSQDの合成では、合成時の濃度、および温度の制御により、PbSの粒径を制御可能であることを確認した。また、作製したPbSの表面保護基置換も行い、保護基の種類と発光特性の相関についても検討した。さらに、これらのPbSQDを用い、単一PbSQDの発光挙動評価も可能であることを見出している。これらの理由から、今年度はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究により、単一PbSQDの蛍光検出が可能であることがわかったため、今後はその光子アンチバンチング挙動を測定することにより、まずは多重励起子緩和、その後、多重励起子生成について検討していく。光子アンチバンチング測定を行うには、単一PbSQDがある程度の蛍光強度を示す必要がある。現在作製しているPbSでは、蛍光強度が若干低い可能性があるため、光子アンチバンチング測定が不可能である場合は、合成法の見直し、および他の種類のQDを用いることも視野にいれ検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
単一光子計数用アバランシェフォトダイオードを購入予定であったが、得られた実験結果より、購入しなくても研究を遂行可能であることがわかり購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の実験結果から、次年度以降、予定以上の消耗品費(試薬、光学部品)が必要になると考えられるので、これらの消耗品費として使用する。
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