研究課題/領域番号 |
26390024
|
研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
白幡 直人 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (80421428)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | シリコン / 蛍光 / 発光 / イメージング / In-vivo / In-vitro / 水溶性 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、生体内(in-vivo)において複数の異なる生体分子認識現象をリアルタイムかつパラレルに観察できる「蛍光イメージング」を実現するための『水溶性蛍光プローブライブラリー』を世界に先駆けて創製する。本研究を達成することで、これまで毒性の高い化合物半導体や資源性に難のあるレアアースに頼ってきた水溶性蛍光プローブを資源性が高く無毒なシリコンで作製できることになる。 本目標を達成するために、本年度は800-1100nmの近赤外域において発光波長を変調できる4種類のシリコンナノ粒子を合成することを目標に掲げたが、7種類作製することに成功した。さらに、シリコンのナノ粒子表面へ長鎖アルカンを接合することで高効率発光させることに成功した。発光効率は最低で20%を超え、最高で42%に達した。さらに、本研究者らが開発した「発光色分離法」を使用することで、各発光スペクトルのスペクトル形状の対称性は極めて高く、またスペクトルの半価幅は165ー300meVの範囲で制御できることが分かった。対称性の高いスペクトルの実験的実証は、従来の考え方を一掃した。つまりこれまでは、非対称発光スペクトルは間接遷移型バンド構造に由来する考えられてきたが、実際は粒子の多分散性に依存することが明らかにされた。さらに、スペクトルの半価幅を増大させるもう一つの要因「ナノ粒子表面」を単分子技術を使って制御することで、従来は、400-500meVであったスペクトル半価幅を上記に示す値にまで減少させることに成功した。これらの成果は特許出願された(特願2014-250651)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
近赤外発光において、スペクトルの対称性、狭半価幅、高効率発光を実現した。また、来年度に予定していた「近赤外発光するシリコンナノ粒子の精製法」をすでに確立した。 これらの成果を通じて、最終目標に掲げる「異なる生体分子認識現象」のパラレル観察実現に大きく近づいた。優れたスペクトル特性は、高効率発光の学理解明につながると期待でき、さらに、他の間接遷移型半導体へも応用できる普遍性を提供できるポテンシャルを示す。そのような見地から、計画以上に進展していると自負できる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題で開発のシリコンナノ粒子の優れたスペクトル特性を損なうことなく水溶性へ変性させるためのプロセスを開発する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
申請書において、アニオン交換液体クロマトグラフィー用カラムを購入する予定であったが、他の方法を使用することでコストパフォーマンス良く精製できることが分かったので購入する必要がなくなったから。
|
次年度使用額の使用計画 |
ナノ粒子の発光効率を下げる要因となる酸化ナノ粒子を効率よく除去するために必要な逆相カラムを購入する予定である(見積額およそ100万円)
|