研究課題/領域番号 |
26390026
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 真也 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70396927)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノシート / 全固体電池 / 薄膜 / リチウムイオン二次電池 |
研究実績の概要 |
リチウムイオン伝導性を示すナノシートを電解質とする薄膜型リチウムイオン二次電池の作製を目指した。まずその前段階として、リチウムイオン伝導と比べて伝導パスの形成が容易であると予想されたプロトン伝導性ナノシートを電解質とする薄膜型プロトン二次電池の作製を試みた。 プロトン伝導性のナノシート及びプロトンの脱挿入によって充放電するナノシート形状の電極をモデル材料として、構造設計指針の構築を行った。具体的には電極-電解質-電極を基板に対して垂直に積層していく垂直スタック型全固体電池と、電極を基板上にパターンで描いてその間を電解質で埋める水平スタック型全固体電池を作製しそれぞれの特性を評価した。その結果垂直型の方が優れた出力を示すことを明らかにした。 その知見を元に、垂直スタック型薄膜全固体リチウムイオン二次電池の形成を目指した。電極には固体内に三次元的なイオン伝導パスを持つスピネル型のマンガン酸リチウム(LiMn2O4)及びチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)を用いることにした。それぞれの電極材料についてゾルゲル法を用いて厚さ30~80nm程度、粗さ6nm程度の薄膜を得た。また、電解液中の評価においてそれぞれが電極として機能することを確認した。それぞれを電極として、それらの間にリチウムイオン伝導性を示すナノシートの分散液を塗工することで薄膜型リチウムイオン二次電池の作製を試みているが、今のところ両電極間の短絡によって電池として機能するセルを得るには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プロトン伝導性のナノシートの場合には分散液を二極間に塗工・乾燥することのみで両極を分離して短絡を防ぐ膜になり電解質として機能したが、リチウムイオン伝導性のナノシートにおいては同様の方法では短絡を防ぐような均一な膜を得ることができなかった。そのため薄膜型リチウムイオン二次電池の形成に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
下記の二点のようにセル形成手法の変更を行い、垂直スタック型薄膜全固体リチウムイオン二次電池の形成を目指す (1)電解質となるリチウムイオン伝導性ナノシートの成膜方法を変更する リチウムイオン伝導性ナノシートの特徴として水など比誘電率の高い溶媒への分散性が非常に高いことである。そのためナノシート分散液を基板上にスピンコートするなどの簡便な方法で薄膜を形成することができる一方で、対向する二つの電極間に均一な薄膜を形成することが困難であることが明らかになった。そこで分散液をミスト状にして暖めた基板に降らすことで堆積させる手法に変更する。これによってあらゆる状態の基板の上にでも均一な膜を形成することを目指す。 (2)電極およびその薄膜の形成方法を見直しスタックの順番を変更する 現時点では、正負極薄膜を形成し、対向させたそれら両極間に電解質膜を形成するという手法を試みている。しかしこの方法では上述のように両極間の短絡を防ぐような均一な膜を得ることができていない。そこで正極→電解質→負極(→集電体)、またはその逆と順番に堆積させる手法に変更する。また、電解質膜上に形成が可能な手法で堆積させることが可能な電極材料に変更する。
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