前年度までに正負極それぞれの薄膜上にリチウムイオン伝導性ナノシート薄膜を形成した電極-電解質接合体同士を対向させ接着するという手法を洗練し薄膜型リチウムイオン二次電池の形成に成功したが数万Ωの非常に大きな内部抵抗が存在し理想的な性能を発揮できていなかった。二次元性の高いリチウムイオン伝導性ナノシートは成膜状態で面内方向に電解液に匹敵する高いイオン伝導性を示すことをこれまでに明らかにしており、その異方的なイオン伝導挙動に起因して電極電解質界面に大きな抵抗が生じたと推測した。この内部抵抗をセル構造を変えることによって低減することを試みた。まず、正負極を並べて基板上に配置し、その上に電解質膜を塗工することで、ナノシート電解質が示す面内方向の高いイオン伝導性を生かすような水平配置型セルを形成した。水平配置型セルの評価を行ったところ電池としては機能したが内部抵抗は貼り合わせ型より大きくなった。電極の配置によって実効的な界面が小さくなってしまったものと推測される。次に電解質内でのナノシートの配向を膜面に対して平行配向から垂直配向にすることを狙い、強磁場中での膜形成を行った。形成される膜面に対して平行方向に磁場をかけた場合に、鉛直方向磁場や磁場の無い状態で形成した場合と比べナノシート再積層体の積層方向の結晶性が高くなったが、磁場によってナノシートの配向制御はできず膜面に対して平行配向の薄膜しか得られなかった。
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