研究課題/領域番号 |
26390030
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
河原 敏男 中部大学, 工学部, 教授 (80437350)
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研究分担者 |
鈴木 康夫 中部大学, 生命健康科学部, 客員教授 (00046278)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノカーボン成長制御 / 自己組織化成長 / 電気伝導率制御 / 糖鎖の評価・最適化 |
研究実績の概要 |
本課題では、電荷の変化を効率的に電流変化として取り出すためのナノカーボン材料の成長制御と、ウイルスの検出部位である糖鎖の最適化を行う。ナノカーボン材料の成長制御として、自己組織化成長では、電子線リソグラフを用いてSi基板上にグラフォエピタキシーで配列化させるため、微細加工条件と配列化の様子を調べた。凹凸パターンが狭い場合は、数層グラフェンがパターンをブリッジした。一方、凹部が広い場合は、凹部にランダム成長するが、適当な間隔の場合は、凹部のカーボン材料も拡散により凸部のエッジに集中するため配列化成長する。次に、成長時の温度・成長時間の影響をラマン分光法、透過型電子顕微鏡で調べ、電気伝導特性と比較した。低温成長では形状触媒効果により凸部のエッジに材料が集中するため、ラマンのG/D比に増大効果が見られた。一方、500℃程度の成長温度の場合は、配列化による歪の効果で粒界界面散乱が導入され、ラマンのG/D比の減少が見られると共に電界効果トランジスタが半導体特性を示した。同様に、初期成長時にも成長促進効果が見られた。電子顕微鏡観察から高温成長、及び、長時間成長でグレインの成長が起こることが分かり、この時に電気伝導率が向上した。これらの結果を論文にまとめて発表した。一方、ヒト型インフルエンザウイルスが効率的に結合する糖鎖を明らかにするため、ヒト肺の糖鎖の構造解析を行った。その中には、シアル酸を含む構造が異なる26種類以上の糖鎖が存在していた。また、糖鎖分子の大きさの評価として、分子間力で基板に結合させたシアリルラクトースを走査型プローブ顕微鏡で観察し、1 nm以下程度の高さであることが分かった。そのため、シアリルラクトースは、デバイ遮蔽長内に入る大きさであり、特異検出用分子として使用可能な候補の一つであると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
数層グラフェンの成長制御を行い、グレイン構造と電気伝導率の関係、自己組織化成長の電気伝導に与える影響が分かった。しかしながら、成長時間制御で層数を減少させた際に、成長を抑えているため、グレインサイズが小さくなり、そのため、電気伝導率が十分に上がらなかった。糖鎖分子の大きさの評価を行い、デバイ遮蔽長内に入り、特異検出用分子として使用可能な候補の一つであることがわかったが、ウイルスとの反応を調べる実験が不十分であった。そのため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
成長時間制御で層数を減少させた際に、同時に、成長温度制御でグレイン構造を増大させるとともに、温度変調成長などの新規成長モードを試みる予定である。その際、粒界界面散乱が電気伝導を支配していることが分かったので、成長条件の検討と欠陥等の評価を組み合わせて最適化を図っていく予定である。受容体分子系の開発では、分子間力による展開で実験を進められることが分かったので、この構造を基本に検出系を構築してウイルスとの反応を調べるとともに、分子系の形状評価を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
数層グラフェンの成長の評価の際に、電子顕微鏡を用いたグレイン構造観察と電気伝導率の関連性を調べることで有益な情報が得られて、その結果、最適化の方策が見つかったため、むしろ、SPMでの観察は糖鎖を対象とすることがメインとなった。そのため、SPM探針に用いる予算が少なくなった。また、糖鎖の形状観察で時間がかかったため、ウイルスとの反応実験が不十分となったが、これを平成27年度に本格的に実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
温度変調成長も含めて、数層グラフェンの成長条件を検討するため、基板やプロセス関連を中心に研究経費を使用する。糖鎖のウイルスに対する反応性を調べるために、各種糖鎖の準備、及び、ウイルスの調整等に消耗品が必要である。また、研究成果を発表するため国際会議へ参加し発表を行う予定である。
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