研究課題/領域番号 |
26390033
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
林 拓道 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 上級主任研究員 (20344228)
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研究分担者 |
蛯名 武雄 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 首席研究員 (10356595)
和久井 喜人 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 主任研究員 (10358369)
SMITHRICHARD Le 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (60261583)
中村 考志 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 主任研究員 (80591726)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 銅ナノ粒子 / 水熱合成法 / 配線用導電性インク / 表面修飾剤 / 分散・耐酸化安定性 |
研究実績の概要 |
分散安定性及び耐酸化性が高く、低温焼成可能な銅ナノインクの作製を目的に、超臨界水還元法による金属銅ナノ粒子の合成について、表面修飾剤の探索、水熱合成条件の検討を行い表面修飾銅ナノ粒子合成技術の確立を目標とする。 本年度は、まず、既存設備に高圧ポンプを増設し、金属ナノ粒子専用の流通式超臨界水熱合成システムを試作した。 有機表面修飾剤として主に高分子系分散剤を選択し、まず、熱水安定性を評価し、ポリカルボン酸とポリイミン系分散剤が熱水処理後も安定であることを確認した。特にポリカルボン酸を表面修飾剤に流通式超臨界水還元法により、銅ナノ粒子の合成条件を検討し、アルカリを添加することにより、銅ナノ粒子分散液として回収できることを確認した。従来のポリビニルピロリドンを表面修飾剤に用いた場合に比べ、多量の貧溶媒を添加することなく遠心分離で回収できることを見出した。 合成した試料のキャラクタリゼーションとして、X線回折及び表面プラズモン吸収から金属銅の生成を確認した。また、電子顕微鏡観察より、粒子径は数10nm程度であった。耐酸化性については、遠心分離後にアルコールに再分散させることにより安定に保存できることを確認した。 さらに、銅前駆体の影響を把握することを目的に、蟻酸銅、酢酸銅及びプロピオン酸銅を原料に用いて、流通式超臨界水還元法により合成を検討し、蟻酸銅では濃度を上げると閉塞や収率の低下が認められたが、酢酸銅及びプロピオン酸銅では、濃度を上げても閉塞や収率の低下は認められず、連続合成が可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、流通式装置の改造のために、2台の高圧ポンプの導入を予定していたが、見積もり価格の上昇により、1台しか導入できなかった。また、表面修飾剤の探索において、原料水溶液の調製の観点から、アルキルアミンやアルキルカルボン酸の場合にミセルを形成し、高圧ポンプでの送液に問題があることが判明した。 上記の表面修飾剤を検討する場合には、表面修飾剤を原料と別のラインで送液し、混合して流通式超臨界水熱合成装置に導入することが必要であり、合成装置の構築が完了しなかった。次年度以降に既存の高圧ポンプの利用や配管・継手の改良により、低分子表面修飾剤についての探索を継続して行う。 その他の検討として、銅前駆体の検討により、濃度を上げても閉塞や収率の低下しない銅前駆体が見いだせたことから、次年度計画のの銅ナノインクの調製のための高濃度化への指針は得られている。
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今後の研究の推進方策 |
低分子系のアルキルアミンなどの表面修飾剤の探索については、合成装置の改造も含め次年度も継続して進める予定である。また、銅ナノインクの作製を目的に、銅ナノ粒子の合成量を稼ぐ観点から、高濃度化及び合成した銅ナノ粒子の各種溶媒への再分散及び濃縮化を検討する。また、合成時に問題となる閉塞について、超臨界水と原料溶液との混合部について流量条件や導入位置などについて検討する。さらに、作製した銅ナノインクを用い、ガラス基板上に塗布・乾燥させ、ガス雰囲気・焼成温度・時間をパラメータに熱処理を行い、電気抵抗がミニマムとなる処理条件を探索する。さらに、走査電子顕微鏡観察等により、銅ナノ粒子の融着状態等を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の合成装置の改造において、当初の計画では2台の高圧ポンプの導入を想定していたが、見積もり価格が上昇したため、高圧ポンプは1台しか導入できなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
流通式合成装置の構築において、装置の配管及び継手の設計変更や混合部の検討など合成装置のさらなる改造を次年度に行う計画である。また、低分子系の表面修飾剤の探索に課題が生じたため、十分検討できなかった面があり、次年度も表面修飾剤の探索を継続して行う予定であり、ポンプの導入も視野に入れ、使用する計画である。
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