研究課題/領域番号 |
26390035
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
谷井 孝至 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20339708)
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研究分担者 |
山本 英明 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (10552036)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 一分子イメージング / 蛍光観察 / FRET / ナノ構造 |
研究実績の概要 |
申請者らが開発した改良型のゼロモード導波路(ZMW)と、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)とを融合した新しいリアルタイム一分子蛍光イメージング法を開発することを目的として下記の実験に取り組んだ。 (1) ZMW内での1分子MB-FRET系の構築: 3'末端をCy3、5'末端をCy5で標識したMBを設計し、このMBをビオチン-アビジン結合を介してZMWに固定した。濃度を調整したMB溶液にZMW基板を浸漬し、各ZMWに連続的に励起光(波長550 nm)を照射したところ、ほぼすべての蛍光スポットで量子退色が観察された。これは個々のZMWに固定されたMBの分子数が1分子であったことを意味する。なお、設計通りにFRETをCy3からの蛍光であればFRETが生じていないのでMBが開環状態であることを、Cy5からの蛍光であればMBは閉環状態であることを意味する。室温で固定したMBの75%はCy5のみの蛍光を示し、残りの25%がCy3からの蛍光を示した。このことは、75%のMBで1分子FRETが生じ、残りの25%ではFRETが生じなかったことを意味する。 (2) FRET効率の測定: 設計したMBではCy3およびCy5からのどちらか一方のみからの蛍光だけが観測され、他方からの蛍光強度はほぼゼロであり、どちらか一方の色素からの蛍光が明瞭に観測された。研究開始前に懸念していたZMWの金属部への電荷移動によるFRET効率の低下は見られなかった。 (3) 相補的DNAとのハイブリゼーションによるMBの開環制御: MBとMBのヘアピン部と相補的なDNAとをハイブリだゼーションさせたところ、48%の1分子MBが開環し、24%が閉環したままで、残りの28%が不安定な挙動を示した。ある程度の有意差をもって人為的に1分子MBを開環させることに成功したが、さらなる制御性の向上が求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・ZMW内への1分子MBの固定法を構築した。 ・ZMWでの1分子MBからのFRET計測系を構築した。 ・ZMWでの1分子MBからのFRET効率が高いことを実証した。 ・相補的DNAとのハイブリダイゼーションによって1分子MBを人為的に開環させることに成功した。 ・当初、平成27年度に実施を計画していた項目に前倒しで着手している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) ZMWの構造や材料を変えることによって、ZMW内でのFRET効率を精密に計測する。すでに、高効率で1分子MBからのFRETが計測できているが、より高い効率を達成できるか、また、従来他のグループから報告されていたZMW内でのFRET効率の低下が何に起因しているのかを調査する。
(2) ZMWをマウントした光学顕微鏡のステージに温度調節機構を付加することによって、リアルタイムに1分子MBを人為的に開閉環し、FRET効率の変化を計測できる計測系を構築する。
(3) 分子間相互作用のリアルタイム1分子蛍光観察モデルを構築する。具体的には、アプタマーとFRETとを融合させることや、1分子MBが1分子制限酵素によって切断される様子をリアルタイムに計測することお試みる。MBが切断させる瞬間と制限酵素がMBを切断する瞬間を捕捉することのデモンストレーションを実施し、開発している1分子MB-FRET系の実行可能性を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
光学部品(ダイクロイックミラー)が当初の予定よりも安価に購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
安価に購入した光学部品(ダイクロイックミラー)を安定して使用できるための消耗品(補強材)の購入に充当する。
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