研究課題/領域番号 |
26390038
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小島 伸彦 横浜市立大学, 総合科学部, 准教授 (90342956)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵島 / 糖鎖 / レクチン / 自己組織化 / 組織工学 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
本年は研究計画にある二つの目的のうち、「組織工学を用いて再構築した膵島について、膵α、β細胞の空間的な配位とインスリン分泌活性とを結びつける分子メカニズムを、とくに細胞接着分子、ECM、糖鎖・レクチンに着目して探索する」という一つ目の目的について研究を進めた。 まずマウスの膵αおよびβ細胞株を用いて、自己組織化的な3次元膵島様構造の再構築現象に関与する糖鎖を見いだすという方針で、細胞表面の糖鎖発現プロファイルを行った。具体的には各種糖鎖構造に特異的に結合する植物レクチンを蛍光標識した試薬を用いて、レクチンの特異的な結合を蛍光シグナルを指標として評価した。その結果、α細胞とβ細胞の両方に結合するレクチン、およびβ細胞のみに結合するレクチンをいくつか見出すことができた。自己組織化的な細胞構造の構築においては、自他の認識が必要になると予想される。したがって、β細胞特異的に発現する糖鎖構造に着目して解析を進めることとした。β細胞に特異的に結合したレクチンは二つともβ-ガラクトシド構造に結合するものであった。β-ガラクトシド構造をレクチンで中和すると膵島様構造の再構築が阻害され、β-ガラクトシド構造を持つラクトースを実験系に過剰に添加すると、再構築現象をレスキューできた。さらにより詳細な検討は必要であるが、レクチン添加によって3次元膵島様構造が構築されていない場合は、構造が構築されている場合よりもインスリン分泌活性が低いことが示唆された。 以上の結果から、膵島様構造の再構築おいて糖鎖に着目することの重要性、さらには膵島様構造の構築が高いインスリン分泌活性に必要である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵島様構造の獲得について、具体的にβ-ガラクトシド構造が必須であることを示すことができたため。また、βガラクトシド構造をレクチンでマスクすることで、膵島様構造の誘導を抑制した場合、インスリン分泌活性が低下することから、細胞による組織構造とインスリン分泌活性とに何らかの相関がある可能性を見いだしたため。
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今後の研究の推進方策 |
レクチンによる構造獲得阻害とインスリン分泌活性との相関について、より詳細に検討を行う。マウスの初代膵島を分離して、この再構築にも糖鎖、すなわちβ-ガラクトシド構造が関与していることを明らかとする。さらには、マウスの膵島細胞を用いて再構築した膵島についても、細胞組織構造とインスリン分泌活性との間に相関があることを確認する。また研究計画にある二つ目の目標における評価方法、すなわちマウスへの移植による膵島機能の評価方法の構築についてとりかかる。ECMの添加によって、インスリン分泌活性がどのように変化するかについても検討してゆき、「ハイパー膵島」の構築を可能とするメカニズムについて、糖鎖の影響も含めて考えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部、試薬などの使用を効率化できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
動物実験などを集中して行う。
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