研究課題/領域番号 |
26390038
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小島 伸彦 横浜市立大学, 総合科学部, 准教授 (90342956)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵島 / 糖鎖 / レクチン / 自己組織化 / 組織工学 / マイクロシステム / 再生医療 |
研究実績の概要 |
本研究は細胞を主構成材料とした3次元組織をマイクロシステムとして捉え、3次元細胞配列や機能を制御可能とするマイクロシステムの作製法や評価法について、膵島を具体的な対象例として取り組むものである。今年度は特に膵島機能を制御し評価する技術や手法について特に進展が見られた。 平成27年度は研究計画にある二つの目的のうち、「組織工学を用いて再構築した膵島について、膵α、β細胞の空間的な配位とインスリン 分泌活性とを結びつける分子メカニズムを、とくに細胞接着分子、ECM、糖鎖・レクチンに着目して探索する」という目的に ついて平成26年度に引き続き研究を進め、レクチンによる糖鎖の被覆によって、膵島の自己組織化現象を抑制できることについて、査読のある国際誌に論文投稿を行い受理された。 これまでα細胞が一定の比率で存在するとき、β細胞のグルコース応答性の培地中へのインスリン分泌活性が向上することをELISAで評価してきた。今年度の研究により、同条件下においてリアルタイムPCRによるインスリン遺伝子発現量も増加していることを確認した。したがって、インスリン分泌活性の向上がインスリン遺伝子の発現量の増加に起因している可能性が示唆された。 膵島のインスリン分泌活性に影響を及びす可能性のある培養手法を発見した。α細胞とβ細胞との相互作用とは関係があるかどうか現時点で不明だが、β細胞におけるインスリン分泌を外因的に制御するメカニズムのひとつであると考えられる。今後の検討内容によっては特許申請を行う可能性がある。 マウスから膵島を分離してこれを酵素処理することで初代膵細胞を得ることができるようになった。初代膵細胞を用いて膵島構造の構造や機能と糖鎖・レクチンとの関連について研究を進める準備ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
α細胞によってβ細胞のインスリン分泌活性が向上するのは、インスリン遺伝子発現量が増加することであることがわかり、機能向上のメカニズムの一端が解明された。また、新規培養手法によってインスリン分泌活性が制御できる可能性が示唆され、膵島機能制御の新たな手法を提案することができた。これまで細胞株を使って構造や機能の評価を行ってきたが、マウス膵島から膵細胞を分離できるようになり、初代膵細胞についても同様の検討ができるようになった。以上の成果により、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に確立したリアルタイムPCRによるインスリン発現量の評価は従来の手法と比べて評価を行うスピードやコストに優れる。様々な培養条件・組織化条件におけるインスリン分泌活性の影響を効率良く類推し、インスリン分泌活性が高まる条件を特定していく。すぐれたインスリン発現量、分泌活性を持つと考えらえる膵島様再構築組織の機能評価を糖尿病モデルマウスへの移植によって確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬などの使用を効率化できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は新規購入すべき試薬や動物などが増えるため、すべての予算を使用する計画である。
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