本研究では、生殖補助医療における体外受精卵の受胎率・出生率向上を目指して、受精操作や培養操作などの複数の機能をマイクロデバイスに集積化し、タイムラプス観察システムと統合することで、高品質な受精卵を作製・管理しながら移植可能な胚盤胞までの発生を促すことのできる体外受精操作統合型プラットフォームの実現を目的としている。平成28年度は、前年度まで個別に開発・評価を進めてきた精子選別機能、媒精機能、培養機能の3つの機能を集積化したマイクロデバイスを開発するとともに、タイムラプス観察システムへの組み込みを行い、統合プラットフォームを構築した。まず、開発した機能集積型デバイスの機能評価として、個別機能の評価を実施し、いずれの機能においても、個別に開発していたデバイスと同等の結果を得ることを確認した。一方、受精卵作製の全行程を実施し、既存の培養系との受精卵の発生率や形態および細胞数などを多角的に評価したところ、発生率は同等であったものの、作製した胚盤胞の品質では若干劣るという結果となった。この原因は、デバイスの材料や培地交換の手法などにあると考えられ、今後継続的に本デバイスに適した培地の開発や、デバイス材料および使用方法の最適化に努める必要性が示唆された。以上のとおり、デバイスにはやや改善が必要であるものの、本デバイスをタイムラプス観察システムに組み込むことには成功しており、品質評価のために培養中の各受精卵をオンラインで観察可能な体外受精卵操作統合型プラットフォームを実現したといえる。
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