研究課題/領域番号 |
26390040
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
堀内 敏行 東京電機大学, 工学部, 教授 (00297582)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リソグラフィ / 円柱面露光 / ウェットエッチング |
研究実績の概要 |
金属管の円筒面にリソグラフィを施す新たな露光装置として、平面レチクル上の原図パターンを投影レンズにより円筒外面頂部稜線上の狭小幅範囲に投影し、レチクルを直線走査するのに同期させて金属管を360°回転させ、円筒面の全周にパターン形成する同期走査投影露光装置を自作してマイクロ部品の製作を目指した。本装置は平成26年度に製作し、27年度は性能向上のため、照明光学系にシリンドリカルンズを入れて試料露光面の露光光線の強度分布の均一度向上を図った。また、金属管の中心軸と、金属管を軸回りに回転させる回転ステージの回転中心軸とのずれを測定して、試料のチャックと回転ステージとの間に入れた小さいXYステージにより修正し、回転振れを±20μm以内に抑える技術を確立した。金属管としては、直径2mm、肉厚50μmのSUS304ステンレス管を使用した。100μmラインアンドスペースパターンのレチクルを約10°傾けて用い、線幅100μmの螺線パターンを形成した結果、ステンレス管の全周に99.4±5μmでパターンを形成できた。また、線幅30μmの螺線パターンについても32.3±6μmで形成できた。 露光性能の向上に加えて、塩化第二鉄水溶液により、金属管をウェットエッチングする検討も進めた。線幅500μm程度の螺線パターンを用いてエッチングを行った結果、肉厚50μmのステンレス管を貫通して開口できることが分かった。一方、既開発のレーザ走査微細管露光装置により、直径100μm、肉厚20μmのSUS304微細管にレジストパターンを形成し、塩化ナトリウム+塩化アンモニウムを電解液とする電解エッチングによりスリット形状に管壁を貫通する穴を多数開ける技術についても検討した。円周上に90°毎に4列に22個ずつ、計88個のスリットを開口できるようになりつつあるが、再現性、エッチングの制御性が今一歩である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウェットエッチングでは、エッチングが等方的に進み、レジストパターンのスペース部から金属管を肉厚方向にエッチングしてパターン形状に穴を貫通させようとすると、エッチングはスペースパターンの両側方向にもほぼ同じ速さで進む。そのため、肉厚50μmの金属管の肉厚方向にエッチング穴を開けようすると、レジストパターンの下も両側方向に約50μmずつエッチング(アンダカット)されてしまう。したがって、マスキング材として用いるレジストパターンには少なくとも100μm以上の線幅が必要であり、現実的にはレジストパターン線幅は最小でも150μm程度である。開発した装置は少なくとも線幅30μmのレジストパターンまで良好に形成できる。ステントなどを模擬したマイクロ部品を製作するのに必要なレジストパターンを、余裕を持って精度よく形成できると考えられる。 線幅の広いレジストパターンを用いれば、試料のステンレス管を塩化第二鉄水溶液によりウェットエッチングできることが分かった。アンダカットによる線幅の減少量もほぼ均一であった。 直径100μmのステンレス管を用いた電解エッチングの検討も徐々に進んでいる。ステンレス管円周面上のレジストに、90°毎に4列に22個ずつ並べた計88個のスリットパターンを均一に形成するまでは確実にできるようになった。ステンレス管を縦にしてエッチングすると、根元側(上側)および先端側に近いスリットでエッチング速度が中央部より速くなる現象が起きている。エッチング後のパターン寸法の均一性を上げることと、日毎のエッチング速度の変化を抑制することが今後の課題である。徐々にではあるが、着実に少しずつ技術が向上しており、順調な進行と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
同じSUS304ステンレス材の直径2mmの管と直径100μmの管の表面に、それぞれ同期走査投影露光、レーザ走査露光によりレジストパターンを形成し、それぞれの管を塩化第二鉄水溶液による化学エッチング、塩化ナトリウム+塩化アンモニウムを電解液とする電解エッチングによりウェットエッチングする方法を検討し、両方の方法により所望の形状にステンレス管を書こうできる見通しになってきている。残りの1年間で網目状のステントの基本形状が確実に作製できるようにしてゆく予定である。 直径2mmの管については、径方向に伸縮可能形状を持つ網目管の製作に挑戦する。また、エッチング液の攪拌方法などを改良し、エッチング精度のさらなる向上に努める。 直径100μmの管については、エッチングが安定になるといわれている、硝酸ナトリウムを主剤とする電解液によるエッチングを試みる。改善度が低い場合は、根元側(上側)および先端側のレジストパターンに対して形状補正をかけたり、エッチング液の撹拌を行ったりして、改善に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初からの予定したように、28年度も実験を進める予定である。これまでの検討を踏まえ、目標とするステント、多孔管、網目管を製作する。そのための管材料費、リソグラフィおよびエッチングに必要なプロセス消耗品経費が不可欠である。また、成果が出つつあり、成果発表や関連技術の情報収集のための旅費も必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
管材料(SUS304など)、パターン形成条件出し用ウエハ、プロセス消耗品(レジスト、現像液、ガーゼ、手袋、容器、薬品、電池)、露光装置やエッチング装置改良用の機械材料、工具などを購入する。 成果発表を応用物理学会、電気学会などに行なうため、参加を予定している。
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