研究課題/領域番号 |
26390043
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
山本 直克 独立行政法人情報通信研究機構, 光ネットワーク研究所光通信基盤研究室, 室長 (60328523)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 量子ドット / プラズモニクス / 光デバイス / ナノ材料 / 光増幅器 / 半導体レーザ / ホーリーファイバ / フォトニックナノチューブ |
研究実績の概要 |
今年度は量子ドット構造の最適化とともに、レーザ構造の上部クラッド層の膜厚を減少させ、可能な限り表面近傍に発光活性層を近づける構造の検討を行った。量子ドット構造の作製ではサンドイッチサブナノ層間分離構造を用いた高密度量子ドットの最適化を実施し、通常のコア・クラッド構造における半導体量子ドット光アンプの開発に成功した。100mA以下の低電流駆動で正味数dB(ファイバ等の結合損失含む)の光増幅特性を確認した。半導体光導波路構造のコア・クラッドにおいて、表面近傍のクラッド層厚を通常の5分の1程度(300nm程度)まで薄くするハーフクラッド構造を作製し、そのレーザ発振の確認に成功した。今後、これら量子ドットとハーフクラッド構造を組み合わせ、金属表面プラズモン励起の可能性についてシミュレーションを交えて検討を行う予定である。さらに、ナノサイズのプラズモン光デバイスを実際に利用するに当たり、将来的にプラズモン光デバイスの極微小領域への光ファイバ接続が重要となることから、本研究課題としてそのコンタクト方法に関する研究を実施した。数10nmの中空をコアとして、その周囲をガラスクラッドで構成されるような光ファイバ:フォトニックナノチューブを提案した。そのフォトニックナノチューブを伝搬する光は、中空領域で電界強度が増強される現象が現れ、それを用いることで光を効率的に数10nmの領域へ集光・伝搬できることが数値計算により確認された。提案するフォトニックナノチューブは、半導体光デバイスやプラズモニック光デバイス等のナノ~サブミクロンサイズの極微小光デバイスへの接続用光ファイバコネクタとして応用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、主として量子ドットの高品質化と、そのゲイン特性を観測することを中心に研究を実施した。また、プラズモニクスを観測するための顕微実験系の設計、構築を実施した。表面プラズモンの散乱を高感度かつ高分解能に観測するための顕微鏡システムであり、本システムでは観測画面の一部分の光スペクトルを切り取ることができるような設計を施しており、効率的に散乱光等の光スペクトル状態を計測することができると期待している。実際の動作は平成27年度に実施を予定している。これらの点では、当初の計画通りに研究が進んでいる。発光材料と金属プラズモンの相互作用に関しては、FDTDシミュレータによる数値計算を実施しており、具体的なデバイス作製にいたる構造設計は平成27年度にかけて推進する予定である。デバイス構造設計と最適化に関しては計画当初より時間がかかる見込みを考えており、予定通り平成27年度も設計することとしていたので、自己評価としては「概ね予定通り」としたい。一方で、プラズモンや半導体光デバイスのような極微小の光デバイスへの光ファイバコンタクト方法について、新たに数10nmの領域に光を閉じ込めることを可能とするフォトニックナノチューブの研究成果を創出することができた。本研究課題目標と関連する学術的に重要な技術として、電子情報通信学会の光エレクトロニクス研究会での発表として研究成果を創出している。また、国際会議Nano S&T(中国・青島)の招待講演として、本プロジェクトの中核技術である量子ドットの光増幅特性に関連する研究成果を発表した。以上のことから、研究成果としても予定通りに創出できていると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、FDTDシミュレーションを中心として、半導体光デバイス上での金属プラズモンの基礎的な数値解析を実施するとともに、プラズモニックデバイスの具体的な構造設計を実施する。平成26年度に構築した表面プラズモン散乱光観測用の顕微鏡システムを用いた量子ドットからの散乱光の観測、光スペクトル評価を実施する。また、量子ドットの光増幅特性が観測されたことから、その高速光データ信号に対する応答特性などを評価し、高ゲイン化や高速応答対応等の研究開発を推進する。具体的には、量子ドットを用いた増幅器+変調器構造によるデータ伝送特性の評価も合わせて実施予定である。量子ドットの発光とプラズモンの相互作用に関しては、量子ドットのシンプルなLED状構造を作製し、それと金属プラズモンによる発光増強を観測することを目標とする。これは、量子ドットによるプラズモン伝搬の光増幅のための布石となりうる。金属構造としては、プラズモン導波路を想定し、細線状の金属薄膜の構造作製を予定しているが、合わせて量子ドットと金属プラズモンの顕著な相互作用の観測が期待される金属ナノ粒子も視野に、研究開発を推進する予定である。また、実際の実験実施では、当初の計画通りに東京電機大学の学生に協力頂く予定である。
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