研究課題/領域番号 |
26390044
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 優 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (50302823)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機デバイス / 価電子状態 / 電子分光 / 電子放射顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本研究は,有機-金属,有機-半導体といった有機デバイスにおいて動作環境下(電圧印加,光照射)でどのような電子準位接続が生じるかに着目する.最先端の電子分光や電子放射顕微鏡を駆使して,真空準位,価電子バンドなど,固体マテリアルの電子物性を左右する準位を断層的に分析し,界面も含めたデバイスの系全体における電子準位接続の3次元マッピングを行う.特にフェルミ準位近傍に出現する電子状態(そのエネルギー位置や空間分布を含めた状態密度)の理解を深めることで,新規デバイス作製にとって最も重要な要素となる電荷注入障壁や電荷輸送特性を自在に制御するための指針を与える. 実験装置の整備を行い,有機デバイスを作製できる真空槽を構築した. 異種基板上にジナフトチエノチオフェン分子薄膜を作製し,その電子状態解析を行った.薄膜の集合状態や価電子状態が金基板上と自己組織化単分子膜基板上では異なることを見出した. シリコン自然酸化膜上にペンタセン薄膜を作製し,その薄膜の集合状態を光電子顕微鏡で追跡した.ペンタセン薄膜はフラクタル成長することが確かめられた. 有機電界効果トランジスタを模した試料を真空槽内で作製し,その価電子状態を電子分光で明らかにした.高電位側の電極付近でペンタセンバンドのエネルギーが大きく変化することを見いたした. 金基板上のジナフトチエノチオフェン,ジベンゾペンタセン分子の電子状態の解析をを第一原理計算で行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画は下記の通りだった. (1)実験装置の整備,超高真空電子分光装置及び光電子放射顕微鏡の整備を行う.(2)金属(電極)-有機層,絶縁層-有機層の電子分光測定,デバイス動作前の電子状態解析を電子分光で行う.(3)第一原理計算による電子準位接続の理論的解析,電子分光実験で得られた知見を理論的に説明するために,第一原理計算による電子状態解析を行う. この3項目ともほぼ計画通りに進展出来た.特に,(2)については電圧印加状態の電子分光測定にも成功した.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降はデバイス動作環境下での電子状態解析を行う.電極を備えた,デバイスを模した試料作製を行い,以下のようなカテゴリー区分をつけてカテゴリー間のフィードバックをかけながら効率よく解析する. (i) PEEMによる仕事関数(真空準位)の二次元マッピング (ii) UPS,MAESによる価電子バンドベンディングの解析
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次年度使用額が生じた理由 |
少額のため次年度に繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品として使用する.
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