研究課題
本研究では複合アニオン化合物と呼ばれる、複数アニオンの層が交互に積層した層状化合物について、様々な観点から物質探索を行った。我々はこれまでに、層構造を形成する元素の組み合わせに関する指針を得ており、励起子発光物質Sr2ScCuSO3をはじめ数多くの複合アニオン化合物を発見している。Sr2ScCuSO3はこれらの化合物は半導体層と絶縁体層が積層した化合物の場合には自然超格子を形成することから、量子閉じ込め効果やそれに由来する励起子発光が発現することが期待でき、昨年度までに見出した化合物のうちのいくつかでも本年度もこれまでの知見を元に新規化合物の探索を行った。その結果、CuTe層、MnAs層とペロブスカイト型酸化物層が積層した化合物を中心に、多数の新物質を発見した。CuTe層を持つ化合物は励起子発光が見られず、Sr2ScCuSO3等と異なる電子構造を持つ一方、高いゼーベック係数を持つことを見出した。またBa3RE2Cl2O5(RE:希土類)で表される化学式を持つ一連の化合物を見出した。Ba3Y2Cl2O5やBa3Lu2Cl2O5は広いバンドギャップと酸素5配位の希土類サイトという特異な配位環境を持っており、Euのドープで高効率発光することが分かった。今後他の希土類元素を添加した場合についても特性を評価する予定である。この他、フッ化剤を用いて低温でフッ素化するトポタクティック反応についてもいくつかの化合物に対して反応を試み、ルテニウム化合物超伝導体Sr2RuO4がCuF2, ZnF2等によりフッ素化されSr2RuO3F2に変化することを見出した。この手法は他の化合物にも適用可能で、今後の発展が見込まれる。
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