平成28年度は、研究目的であった動作環境下における有機薄膜太陽電池の電子構造測定手法の確立とこれに関連して研究を進めた半透明太陽電池に関する研究を実施した。 動作環境下における電子構造測定手法の一つとして、電場変調分光測定システムの構築を進めた。電場変調分光法では、測定システムを立ち上げ、これまでの研究報告例との比較によってシステムの評価を行った。また、本研究では一般的な反射光による電場変調分光法ではなく、透過光による電場変調分光法を実施することとしたため、昨年度に確立したカーボンナノチューブ電極を用いた半透明電極を用いた素子を用いた実験を行った。2017年3月時点では、電場変調スペクトルと光電変換プロセスとの相関を考察するためにより多くのデータの蓄積が必要な段階であり、実験を継続中である。 一方で、半透明太陽電池の光電流電圧特性の測定結果からは、光電変換プロセスに関する興味深い結果が得られた。半透明太陽電池は上下に透明電極を持つため、両面からの光照射によって発電が可能である。そこで、光照射方向と光電変換特性との関係を詳しく調べたところ、照射方向によって生成される電流量が異なることがわかった。この原因は、単純な電極の透過率の違いだけでは説明できず、発電層における電荷輸送効率の偏りに関係していることが示唆された。半透明太陽電池において、光照射方向による光電変換特性の違い自体はこれまでにも報告があったが、発電層の電荷輸送効率と関連させた議論はほとんどなく、太陽電池の発電プロセスの理解を進めるうえで興味深い視点となりうる。
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