研究課題/領域番号 |
26390054
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
鈴木 良尚 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (60325248)
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研究分担者 |
藤原 貴久 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教務補佐員 (10648695)
佐藤 正英 金沢大学, 総合メディア基盤センター, 教授 (20306533)
佐崎 元 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60261509)
勝野 弘康 立命館大学, 理工学部, 助教 (70377927)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 液液相分離 / 融液様成長 / リゾチーム / グルコースイソメラーゼ |
研究実績の概要 |
(具体的内容):1. 超純水中で遠心濃縮法による結晶化を行った、リゾチーム斜方晶系結晶の構造解析を行い、塩析によって結晶化されたリゾチーム斜方晶系結晶中の3次元分子構造との比較考察を行った。その結果、塩析によって得られた結晶では、分子の中にナトリウムイオンが取り込まれ、周辺残基との間に水素結合を形成して、正八面体構造を形成しているのに対し、遠心濃縮法による結晶化ではナトリウムイオンが存在せず、そのサイトにおける72セリンのヒドロキシ基の配向に大きな変化が確認できた。 2. 遠心濃縮法による結晶化が、リゾチーム特有の現象でなく、タンパク質結晶化に普遍的に起こるものかどうかを確認するため、グルコースイソメラーゼの結晶化を試みた。その結果、リゾチーム同様、液液相分離を起こし、濃厚相から結晶化を確認できた。 (意義):本研究では、融液成長のモデルとして結晶成長機構を取り扱う予定であるが、その際に重要になるのは結晶中における結合エネルギーである。結合エネルギーを評価するために使われるマクロボンドエネルギーの算出には、詳細な分子構造及びその結晶中におけるパッキングの情報が必要となる。構造解析により、1.7 Å程度の分解能で立体構造が分かったこと、かつ、遠心濃縮法によって得られた結晶中における構造が分かったことはこれらの情報を得るために必須であり、それが得られたことは意義深い。 (重要性):結晶構造解析によって得られた立体構造は、本手法が通常のタンパク質の構造決定に十分使える分解能の結晶を育成できるという意味を持ち、大変重要である。また、グルコースイソメラーゼでも全く同様に結晶化・結晶構造解析を行えることが確認できたことは、新たな育成法の確立という意味での重要性と、融液様成長がタンパク質の結晶化において、普遍的に重要なプロセスであることを示唆しているという重要性を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
融液様成長の速度論的な測定という面に関しては、やはりハンドリングの問題が大きいことと、3Dプリンタによる結晶成長容器の設計が思った以上に難航し、あまり進展していない。 しかしながら、これまでの本研究の内容をまとめて論文化する方向へは、昨年度の構造解析を中心とした業績により大いに進展している。構造解析によって明らかになった、本研究での沈殿剤フリーのリゾチームの分子立体構造と、従来の塩析結晶中の構造との違いの詳細な情報は、この手法の信用性と有用性をバックアップすると同時に、本研究のメインテーマである融液様成長のメカニズムの解明に必須の、結晶中の分子間相互作用を計算するために必要不可欠な、立体構造の情報を充実させた。 現時点でまとめた、本研究の内容の論文は、初稿を共著者間に回し、査読を依頼している段階ではあるが、概ね高評価をもらっている。近いうちに投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
我々の研究グループの得意とするハンドメイドの結晶成長容器設計に立ち返り、透析フィルタを擁したその場観察セルの開発を半期で完成させ、共焦点微分干渉顕微鏡を使ったデータ収集を行う。 また、完全に脱塩した状態ではなく、生体内の至適塩濃度での結晶化を行い、塩析結晶中の構造と有意に構造の違いがあることになれば、本手法の重要性をさらに高めるため、その方向での推進も並行して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
215,881円(鈴木良尚):27年度中に購入予定であった、グルコースイソメラーゼ溶液(31万円)の購入に足らなかった。 166,509円(佐藤正英):27年度中に予定していた学会参加が28年度に変更になったため
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次年度使用額の使用計画 |
鈴木良尚:グルコースイソメラーゼ溶液の購入に使用する。 佐藤正英:旅費として使用予定。
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