研究課題/領域番号 |
26390055
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
金田 寛 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任教授 (30418131)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シリコン / 原子空孔 / 形成エネルギー |
研究実績の概要 |
高温熱処理によってシリコン結晶(ウェーハ)中に熱平衡単原子空孔を発生させ,この状態を急冷凍結にさせる.種々の熱処理温度に対してこのようなシリコン結晶を作成し,低温超音波法によって,熱処理温度の関数として熱平衡単原子空孔の濃度を測定する.この結果(単原子空孔濃度のアレニウスプロット)から,単原子空孔濃度の形成エネルギーを求める. この実験を可能にする程度の熱平衡原子空孔(10^13個/cm^3程度)を十分に清浄な雰囲気中で結晶に導入し,急冷凍結すること自体が非常に難しい.本年度は,ウェーハメーカの協力を得て,製品製造用のRTO(Rapid thermal oxidation)装置を使うことによって,最高1350℃での熱処理で発生する熱平衡単原子空孔を120℃/sの急冷凍結する実験を試みた.超音波計測によってこれらのウェーハの空孔濃度を測定したところ,1350℃の場合には,約10^13個/cm^3の単原子空孔が凍結された試料を作成することに成功した.育成後の単結晶シリコンに熱処理を施すことによって,このような高濃度の単原子空孔を導入できたのは世界初であり,本研究の大きな成果となる. 次年度は,上記の1350℃実験の追試を行い,さらに他の温度で(例えば1250℃)導入した熱平衡単原子空孔の濃度を定量する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で一番難しいと考えれた (1)1350℃付近ないしそれ以上での (2)清浄な雰囲気中での熱処理と, (3)その高温欠陥状態の急冷凍結(高速急冷) の三つの課題がほぼクリアされる見通しがついたため.
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今後の研究の推進方策 |
シリコン結晶の原子空孔に関する半世紀の研究でも実現できなかった高温熱平衡原子空孔の急冷凍結(集合体化を避けて,点原子空孔のまま常温までもってくる)の研究が,シリコンメーカが保有する最新鋭の高品質シリコンウェーハ製造(改質)装置の実現によって可能になった.今後は,1350℃実験の追試と同時に,他の低温処理についても(現状では1350℃が装置限界)単原子空孔濃度が凍結された試料を作成し,単原子空孔濃度のアレニウスプロットを試みる. 本方法にて1350℃の原子空孔を単原子空孔のままで急冷凍結できるkとは,2016年秋の応用物理学会にて(日にちのオーバーラップがなければ物理学会でも)発表予定.
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次年度使用額が生じた理由 |
新潟大学で実施予定であった低温超音波測定がマンパワーとマシンタイムに都合によって最終年度に持ち越され,また使用した寒剤の量と単価が見積もりよりも安価で済んだため. ウェーはメーカからのRTO処理ウェーハの購入が,予想外の低価格で行うことができたため.一方,ウェーハメーカとの処理条件絞り込みの打ち合わせ,ならびに関連する欠陥評価技術に関する研究会や情報収集(メーカ訪問など)に必要な旅費が幾分膨らんだため. 28年度において,27年度と同等量の寒剤を使用する見込みであるため,最終的には,ほぼ当初計画通りの費目別予算消化となる予定.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(28年度)の寒剤使用料としては,27年度の単価ベース計算で,40-50万円を見込んでいる. 場合によると,処理雰囲気を超高純度窒素(N2)ガス(現状は,超高純度O2)に変える必要が生じた場合の再実験費用(ウェーハ調達と寒剤使用料)を予算に計上しておく.
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