研究課題/領域番号 |
26390056
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
中村 成志 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (70336519)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Ⅲ族窒化物半導体 / プラズマ照射誘起欠陥 / プラズマダメージ |
研究実績の概要 |
Ⅲ族窒化物半導体中のプラズマ照射誘起欠陥の発生・導入過程を解明することを目的とし,プラズマに用いる希ガスを変化させてプラズマダメージ量の原子量依存性を評価した.使用したガスはHe,Ne,Ar,Krで,ラングミュアプローブによりプラズマパラメータ・条件を計測しながらプラズマ照射実験を行った.GaNおよびAlGaNに対する実験の結果,軽元素の方がより多くのプラズマ照射誘起欠陥が発生・導入されることが明らかになった.プラズマ種と構成元素であるGaおよびNが衝突する場合,ArやKrでは原子量が大きいためNとGaの両方に変位を引き起こす.一方,HeやNeといった軽元素はGaとの原子量差が大きいため,窒素変位を選択的に引き起こすと予想される.実際に,プラズマフラックスと弾性衝突伝達比を考慮した計算により,プラズマダメージ量の原子量依存性の実験結果がよく説明できることを明らかにした.これらの結果から,プラズマ照射誘起欠陥の起源として,窒素変位に関係する窒素空孔,格子間窒素が関与していることが示唆される.n型GaNとp型GaNの両方にプラズマ照射を行って欠陥の電気的特性および挙動を調査した結果,半導体表面に発生・導入された欠陥はドナー型,半導体内部に発生・導入された欠陥は,p型GaN中ではドナー型,n型GaN中ではアクセプター型の挙動を示すことが分かった.導入された欠陥はnegative-U型の欠陥であり,半導体内部でのフェルミ準位との位置関係により挙動が異なるのではないかと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,プラズマ照射誘起欠陥の発生・導入メカニズム解明を目的に,物理衝突効果およびプラズマ発光の影響を調査することを計画していた.物理衝突効果については計画通り順調に研究が進んでいる.一方,プラズマ発光の影響については,発光スペクトルの測定・評価を行い,プラズマ条件による発光の比較は行えているが,プラズマ照射中に光を遮ることができていないことから,当初計画していた光の有無についての検証ができていない.このため,おおむね順調と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後については,申請書に記載した当初の研究実施計画(平成27年度,28年度計画)に従い研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度導入したラングミュアプローブの価格が見積時より10万円程度高額になり,購入予定であった約30万円の半導体基板を購入する予算が足りなくなってしまった.平成26年度に必要な実験消耗品の購入以外は無理に使用せず,次年度の基板購入に充当するために残した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度予算と前年度未使用額を合わせ,高額な実験消耗品の購入にあてる.
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