研究課題/領域番号 |
26390057
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
上田 修 金沢工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50418076)
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研究分担者 |
矢口 裕之 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (50239737)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 希釈窒化物半導体 / 欠陥 / 光照射 / 劣化 / 点欠陥 / 転位 / 電子顕微鏡 / フォトルミネッセンス |
研究実績の概要 |
平成26年度は、本研究の目的および研究実施計画に沿って下記の2項目の研究を行った。 (1)希釈窒化物半導体中の欠陥の微細構造とその光学特性に与える影響の評価:(001)GaAs 基板上に、MBE成長したGaAsN結晶中の欠陥の評価をTEMにより行った。成長温度500℃、膜厚は、0.1 μmである。TEM観察の結果、以下のことを明らかにした。As-grown中の薄膜と、 GaAs基板との界面には、2つの<110>方向に沿って、ミスフィット転位が形成されていた。TEMコントラスト実験の結果から、ミスフィット転位は60°転位が殆どと推定された。また、ミスフィット転位以外の欠陥、即ち転位ループ、積層欠陥、微小双晶、および析出物は観察されなかった。 (2)希釈窒化物半導体への光照射による欠陥の挙動と劣化態様の評価:1)まず、BSPP(発光波長=532 nm)を光源とした光照射により、PL強度の低下、すなわち劣化が観察された。現在の光出力密度の範囲内(4 MW/cm2以下)では、劣化に伴って特に、TEMで観察されるような新たな欠陥は発生していない。また、ミスフィット転位も照射により特に、すべり運動や上昇運動は起らなかった。今後、光照射密度をさらに高くして結晶欠陥の形成が起きないか調べていく; 2) 1)に関連して、MOCVD p+GaN/アンドープGaN(0, 50, 100 nm)/InGaN/GaN SQW構造への光照射の実験も行った。まず、InGaN 半導体レーザ(発光波長 = 375 nm)を光源とした光照射によりPL強度の低下、即ち結晶の劣化が観察された。また、アンドープGaN層の厚さが薄いほど劣化度が大きいことを明らかにした。さらに、劣化は活性層での発光がp+クラッド層中の何らかの非発光再結合中心に吸収されることによる点欠陥反応増殖機構により促進されると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GaAs基板上のGaInNAsのMBE成長実験は、装置が故障したために、遅れている。そこで、今年度は、類似の希釈窒化物半導体材料である(001)GaAs基板上のGaAsN薄膜の成長を行い、そのPLによる光学的評価およびTEMによる構造評価の研究が進んだ。また、GaAsN/GaAs構造およびGaN/InGaN SQW/GaN構造への照射実験は進んだ。 以上全体としては、概ね順調に推移しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究進捗に照らし合わせて、平成27年度は、以下のような推進方策を講じることとする。 (1)遅延していたGaAsNの成長から、計画されていたGaInNAsのMBE成長を行う。また、As-grownのGaInNAs結晶に関しては、InおよびNの組成と光学的特性および微小転位ループ、積層欠陥などの結晶欠陥の発生への影響について調べる。 (2)(1)の単層薄膜中の欠陥評価および同単層膜への光照射による劣化実験を行う。 (3)(2)の進捗状況に応じて、GaAs/GaInNAs QW/GaAs構造の作製やドーピング実験も行い、GaAsバリア層あるいは量子井戸層にドーピングした試料への光照射を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の後半に、金沢工業大学ものづくり研究所の電子顕微鏡の保守のため、使用が一時不可となり、同電子顕微鏡を用いた実験のための金沢への出張ができなかったため(一回の出張旅費分の予算残)。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、上記の実験を、行うために金沢出張を行い、同費用を使用する予定である。
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