研究課題
平成28年度は、本研究の目的および研究実施計画に沿って下記の2項目の研究を行った。(1)照射パワー密度のGaInNAs/GaAs QWの発光効率に与える影響:光通信用半導体レーザや多接合型太陽電池への応用が期待されるGaInNAsは、デバイス動作時に劣化が生じることが懸念されている。今年度は、MOVPE法によって作製したGaInNAs/GaAs単一量子井戸に室温下でレーザ照射を行うことによって生じる発光効率変化に関して以下の知見を得た。a)レーザパワー密度が低い範囲では、レーザ照射によって発光効率が増加し、また、レーザパワー密度が高くなるにつれて発光効率の増加速度が速くなった。解析の結果、異なる2つの時定数で特徴づけられる過程が存在することが分かった。b) レーザパワー密度が高くなると発光効率はレーザ照射によって瞬時に増加した後減少した。この時の減少速度はレーザパワー密度が高くなるにつれて速くなり、減少量も大きくなった。発光効率減少についても異なる2つの時定数で特徴づけられる過程が存在することが分かった。時定数の短い成分はレーザパワー密度増加に伴い増加するのに対して、時定数の長い成分はレーザパワー密度にあまり依存しなかった。このことから時定数の短い成分はレーザ照射による新たな欠陥の発生あるいは増殖に対応すると考えられる。(2) GaInAs層にNをδドープした結晶への光照射劣化およびその劣化部の構造評価:N量があまり多くないGaInNAs QWでも劣化は起こる。劣化部での転位ループなどの欠陥発生の有無を調べるために、局所的にNを高濃度導入した試料:Nをδドープした層を20層含むGaInAs層を用い、光照射劣化した領域の断面TEM観察を行った。その結果、現状の照射条件下では、劣化部中に、上記構造欠陥は見い出せなかった。今後、さらなるレーザパワー密度の増強により調べていく。
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Phys. Stat. Solidi B
巻: 254 ページ: 1600542
10.1002/pssb.201600542
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10.7567/JJAP.55.1202BB