研究課題/領域番号 |
26390063
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
小林 功佳 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (80221969)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 表面界面電子物性 / 計算物理学 / 単原子層薄膜 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、SnTeおよびPbTe単原子層の電子状態について理論的に研究した。 最近、トポロジカル結晶性絶縁体(TCI)が盛んに研究されている。TCIとは、絶縁体の電子状態を、結晶の点群対称性によって定義されるトポロジカル数によって分類することである。TCIの最初の現実的な物質は、SnTeおよびそのPbとの合金である。それらは、理論的に提案され、実験的に検証された。これらは、3次元系である。最近、2次元(2D)のTCIが提案された。しかし、2D TCIはまだ実現していない。本研究では2D TCI薄膜の電子状態を理論的に研究した。 2D TCIの提案は孤立した薄膜の電子状態計算に基づいている。2D TCIの実現には、それらを基板上に成長させることが必要であろう。しかし、時間反転対称性によって保護されるトポロジカル絶縁体とは異なり、TCIは結晶の対称性によって保証されている。そのため、基板や環境との相互作用によってその性質は簡単に壊される。したがって、基板上や環境下での2D TCIの電子状態を研究することは重要である。本研究では、基板上等に置かれたSnTeとPbTeの単原子層の電子状態を計算した。 まず、孤立した単原子層の電子状態を密度汎関数法により計算した。平面構造を仮定しすると、PbTe単原子層はTCIの特徴であるエッジ状態を持つことを見出した。しかし、構造最適化を行うと、平面構造は不安定であることがわかった。このため、平面構造を維持するために、2つの表面によって挟まれた単原子層の系を考えた。表面としては、アルカリハライド表面を考えた。2つのNaBr表面に挟まれたSnTe単原子層ワイヤのバンド構造を計算するとエッジ状態が存在する結果が得られ、この系は2D TCIであることが示された。構造最適化によってもこの系の平面構造は安定であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SnTeおよびPbTe単原子層の電子状態の計算を行い、新たなトポロジカル結晶絶縁体である可能性を示したこと。その成果の学術雑誌への掲載が決まったこと。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に研究した系以外の系についても計算を行い、新たなトポロジカル絶縁体等を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
パソコンとそれで使用するソフトを購入しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年4月に購入した。
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