平成30年度は、高次トポロジカル絶縁体の電子状態とその電子輸送特性に関する理論的な研究を大学院生とともに行った。通常のトポロジカル絶縁体には、3次元結晶の表面に2次元の表面状態が、もしくは、2次元結晶のエッジに1次元のエッジ状態が存在する。これに対して高次トポロジカル絶縁体とは、3次元結晶のエッジに1次元的なエッジ状態が、もしくは、2次元結晶の角に0次元的な局在状態が存在する物質である。高次トポロジカル絶縁体は、2017年に理論的に提唱され、2018年にマイクロ波を用いた系などで実現された。本研究では、3次元高次トポロジカル絶縁体のエッジ状態による電気伝導特性について理論的に研究した。まず、高次トポロジカル絶縁体のモデルとして提案されたタイト・バインディング模型について、そのバンド構造を計算して高次トポロジカル絶縁体を表すことを確かめた。次に、高次トポロジカル絶縁体のタイト・バインディング模型の端に2つの電極を付した系を考え、その間に流れる電流の値を計算して、2端子電気伝導特性の計算を行った。計算には、透過率の計算結果を用いて電気伝導度を求める弾道的な計算を行った。2端子間の距離を変えた場合について計算を行い、電気伝導特性の様子を詳細に調べた。また、電子のエネルギーを変えて計算を行い、その電気伝導特性の変化についても調べた。今後は、現実の物質で高次トポロジカル絶縁体であるとされているビスマスについて研究を行う予定である。
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