研究課題/領域番号 |
26390066
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
新部 正人 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 准教授 (10271199)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ドライエッチング / UV照射 / プラズマ / 化合物半導体 / イオンビーム / 欠陥 / 軟X線吸収 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、ワイドギャップ半導体材料としてAlGaN, VPE-GaN,およびTiO2スパッタ膜について、ガス種をArとCF4および大気圧酸素について、UV照射効果を比較した。ここでは特に、AlGaN試料をCF4プラズマ処理した結果について述べる。 CF4ガスを用いたプラズマは非常に暗く、UV領域の発光も少ない。これに対してArはUV領域の発光が強い。AlGaN試料について、両ガスによるプラズマ処理表面を比較すると、Arプラズマでは表面欠陥が発生し、粗さも増大した。一方、CF4プラズマでは、表面荒れがほとんど起こらないことが分かった。しかしながら、CF4プラズマに、さらにUVランプを用いてUV照射しながら表面処理すると、顕著な表面欠陥が現れた。この欠陥は、CF4ガス圧の高い100mTorr、かつ60min以上の長時間エッチングにより顕著に現れた。UV照射しながらの表面処理による組成変化として、N/Ga比が短時間の処理でも急激に減少し、N原子(イオン)の選択エッチングがエンハンスされることが分かった。しかしながら、軟X線領域の吸収分光法(NEXAFS)で測定した化学結合状態をArプラズマで処理したものと比較すると、結晶構造の乱れ方はArよりも小さかった。すなわち、上記3者の処理によるダメージの大きさは、CF4<CF4+UV<Ar のように準位付けできる。(S. Hirai et al. e-J. Surf. Sci. Nanotech. 13, 481 (2015)) また、その理由について、XPS法やプラズマシミュレータ等による解析から、CF4においてはガス圧高い領域でF+イオンが生成し、これがAlやGa原子と結合して化合物が形成されるため、N欠陥の形成を抑制し、比較的平坦な表面を形成するのではないかと考察された。(R. Kawakami et al. Vacuum, 119, 264 (2015)).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオンビームエッチング装置では、予想していたものよりUV照射効果は小さく観測された。これは、イオンビームエッチングはイオンフラックス密度がプラズマエッチングと比較して小さく、UV照射効果が十分に顕在化しないのが要因ではないかと考えられる。これに対して本年度は、プラズマエッチング装置内にUV照射機構を設けることにより、別途UV照射効果を検討できた。 また、ショトキーダイオードを形成した電気物性評価やフォトルミネセンス法による評価も開始しており、欠陥の深さ方向評価について一応の成果を出すことができた。(Y. Nakano et al., "Ar+-irradiated damage in hydride vapor-phase epitaxy GaN films" J. Vac. Sci. Technol. A33, 043002 (2015)).
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今後の研究の推進方策 |
昨年度報告の推進方策に従って、プラズマエッチングにおけるUV照射効果の評価、プラズマエッチングシミュレータの導入、ショットキーダイオードの作製等は進めることができた。しかし、主装置であるイオンエッチング装置では、排気装置の故障などがあり、イオンフラックスの増加、イオン電流モニターシステムの構築などが十分にはできなかった。 したがって今後の推進方策としては、イオンガンの動作ガス圧を上げることにより、安定動作するガス圧範囲を確認し、イオンフラックスの増加を図り、UV照射効果をより見やすくする。
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次年度使用額が生じた理由 |
主要装置であるイオンエッチング装置の排気ポンプが故障し、新たにドライ真空ポンプを購入する必要性が出た。また、紫外線ランプの強度を高めるために、従来の二股のライトガイドに対して、新規の石英ファイバーライトガイドを購入した。これらの出費のために、27年度に予定していた卓上型プローバを購入する予算が不足してしまった。 以上より、旅費、人件費等の出費を抑え、次年度にプローバを購入するための予算を確保する必要があり、他項目の出費は抑えた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に交付される予算を含めて、予算の使用法を見直し、卓上型プローバとステージポジショナーを入手したい。これらを用いて、電気的評価ができるように整備していく。
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