非蒸発ゲッター(NEG)ポンプは、エネルギー消費が極めて少ない、10-10Pa台まで排気できる、振動・騒音を生じない、小型軽量である、油をまったく使用しないといった利点を持つ優れた真空ポンプである。本研究の当初の目的は、三次元網目構造を持つ高純度ジルコニウム多孔体を用いた新しいNEGポンプの開発であったが、高純度ジルコニウム薄板を用いて試作したNEGポンプが排気作用を示さなかったこと、高純度ジルコニウムよりもZr-V-Fe合金(ST707合金)などのNEG材料の方が高い排気速度を持つことから、目標を高めて三次元網目構造を持つST707合金などのNEG材料を用いた新しいNEGポンプの開発を進めることにした。平成27年度は、三次元網目構造を持つニッケル多孔体にST707合金をスパッターにより製膜したNEG材料を開発した。しかしながらこのNEG材料を用いて製作したNEGポンプの排気速度を測定したところ、水素ガスに対して3L/s以下の排気速度しか得られなかった。そこで、市販のST707合金ピル60個をヒーター周りに放射状に配列したST707合金ピル積層型NEGポンプを開発し、その排気速度を室温にて測定した結果、H2、N2、CO、CO2に対する排気速度は既存のNEGポンプと比べても十分競争力のある性能が得られた。本成果で特許を出願し、2016年の放射光学会年会などで発表した。 平成28年度は耐久性に優れ、低い温度で活性化できるNEGポンプの開発を目指して真空蒸着によるPd/Tiコーティング法を開発した。真空容器内壁に真空蒸着法によりPd/Tiコーティングを行い、最高温度185℃、6時間ベークでNEG性能を発揮することと、活性化と大気圧ベントを6回繰り返してもNEG性能が低下しないことを確認した。本成果で特許を出願し、2016年の真空に関する連合講演会などで発表した。
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