研究課題/領域番号 |
26390072
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
廣瀬 和之 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (00280553)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 界面 / シリコン酸化膜 / MOSFET / アモルファス / 欠陥準位 / 光電子分光 |
研究実績の概要 |
p型Si(100),Si(110), Si(111)基板上に膜厚1.2~1.3 nmのSiO2極薄膜をドライ酸化で形成した.これら試料のSi 1s光電子スペクトル,Si 2p光電子スペクトル,Si KLLオージェ電子スペクトルを放射光施設SPring-8で測定した. 得られたスペクトルのピークエネルギーから,SiとSiO2の緩和エネルギーの差ΔRを算出したところ,ΔRはSiO2/Si(100) < SiO2/Si(110) < SiO2/Si(111)の順に大きくなる事を見いだした.このことは,SiO2の光学的誘電率がこの順に小さくなっていること,すなわちアモルファスSiO2膜の物性が下地Si結晶の面方位に依存して変化することを示唆している. 次に,これら試料のSi K端XANESスペクトルを放射光施設UVSORにて全電子収量法で測定した,その結果,SiO2のSi K端XANESスペクトルの吸収強度のX線入射角度依存性が,SiO2/Si(100)よりSiO2/Si(111)の方が大きいことを見いだした.このことは,1 nm程度のSiO2極薄膜は完全なアモルファス構造ではなくSi基板の面方位を反映したなんらかの原子構造が存在することを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Si基板にドライ酸化で形成したSiO2極薄膜内の正孔トラップ密度がSi基板面方位に依存して異なるという初期の知見を,新たに極薄SiO2膜の緩和エネルギーのSi基板面方位依存性でも確認できた. このように確認できた極薄SiO2極薄膜の物性の違いを招く原因を明らかにする上で,XANESのSi K端吸収強度の角度依存性の測定が有効であることを新たに見いだして,本研究に用いる手法を強化できた. 成果をロシアで開催された国際ワークショップ,ならびに秋期および春期の応用物理学会で発表した.
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今後の研究の推進方策 |
XPSを用いたSiO2薄膜の価電子帯スペクトルと内核準位O2sスペクトルを測定する.また第一原理分子軌道計算を行い,価電子帯と内核準位のエネルギー差が測定データを再現するSi-O-Si角度を求め,アモルファスSiO2の原子構造の特徴を抽出する.
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