研究課題/領域番号 |
26390073
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
三浦 健太 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (40396651)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Si / SiO2 / 多層膜 / 発光 / スパッタリング |
研究実績の概要 |
本研究は、高周波スパッタリングで形成したSi/SiO2多層膜から観測される紫外発光強度の増大を目的としている。Si/SiO2多層膜からの紫外発光は、ナノ結晶化していると推測されるSi層(Si-nc)と、Si-ncとSiO2層との界面に存在する境界層が関与し、その発光強度は、Si-ncのサイズによって変化するものと考えられている。Si-ncのサイズは、SiおよびSiO2の堆積量の比で、ある程度制御が可能と思われる。そこで平成26年度は、Si層とSiO2層との推定膜厚の比に対する、紫外発光ピーク強度の変化について初めて詳しく調べた。 Si/SiO2多層膜の一周期あたりの推定厚さに対するSi層一層の推定厚さの比をパラメータとし、この比を0.15から0.30の範囲で変えた複数の試料を、高周波マグネトロンスパッタリング装置を用いて作製した。それらをアニール処理後、フォトルミネッセンス(PL)スペクトルを測定し、波長370nm付近の紫外発光ピーク強度を評価した。PLスペクトルの測定には、励起光源としてHe-Cdレーザ(波長325nm)を使用し、モノクロメータ、光電子増倍管、およびロックインアンプを用いた。 結果として、Si/SiO2多層膜の一周期に対するSi層の推定膜厚の比が0.29の時、紫外発光ピーク強度が最大になることがわかった。その最大発光強度は、最もピーク強度が低い試料と比較すると、約8倍であった。すなわち、Si/SiO2多層膜から観測される紫外発光ピーク強度が、SiおよびSiO2層の膜厚比により変化することが初めて示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画では、Si/SiO2多層膜のスパッタ成膜条件(主にSi層とSiO2層の膜厚の比率)やアニール条件と発光特性との関連性を詳しく調べ、それらの条件の最適化を行うことを予定していた。それに対し、平成26年度の研究実績は、Si層とSiO2層の膜厚の比率に対する紫外発光ピーク強度の変化を詳しく調べ、そのピーク強度が最大となる比率を絞り込むことに成功した。本研究の目的である、Si/SiO2多層膜の発光強度向上へのステップは、着実に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Si/SiO2多層膜から観測される発光の更なる向上を目指すためには、その光取り出し効率の改善(主にSi/SiO2多層膜と空気等との界面での反射損失の低減)が重要な課題となる。そのための手段として、今後、Si/SiO2多層膜に対し、フォトニック結晶構造の適用を試みる計画である。 まず、フォトニック結晶構造がSi/SiO2多層膜上に形成されているモデルを考え、フォトニック結晶の格子定数および凹凸深さと、光取り出し効率との関連性を、結合波解析法等を用いて解析する。本研究では、簡単のため、フォトニック結晶を一次元周期構造として計算を行い、目的の発光波長において光取り出し効率が最大になるよう、フォトニック結晶の構造を設計する。その設計に基づき、二光束干渉露光法を用いてSi/SiO2多層膜上にフォトニック結晶構造を形成し、そのフォトルミネッセンス特性を評価することで、発光強度改善の効果を確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Si/SiO2多層膜を作製する際に用いるSiおよびSiO2ターゲットの消費量が、当初の予定より少なかったため、これらを購入する必要が無く、その分、主に物品費に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には、上記のSiおよびSiO2ターゲットが寿命となる見込みのため、それらの購入費用に充てる計画である。
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