研究課題/領域番号 |
26390074
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
森田 健 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30448344)
|
研究分担者 |
北田 貴弘 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (90283738)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | スピン軌道相互作用 / 超高速スピン制御 / 半導体量子井戸 / チェレンコフテラヘルツパルス |
研究実績の概要 |
平成26年度の計画書では,まず(1) GaAs単一量子井戸(SQW)の作製とスピンダイナミクスを観測するための時間分解光学系の構築を行うことと,次に(2) スピン緩和時間のゲート電圧依存性を測定し,量子井戸内部の有効磁場を明らかにすることを目標とした. 平成26年度は (1)に関連し,0.8mm帯のパルスレーザを光源とした時間分解Kerr回転測定系を構築した.この光学系で,GaAs (001) SQW中のスピンのダイナミクスを観測し,電子スピンが数百psで緩和する様子を観測した.それだけでなく,スピンダイナミクス観測中にCW光(530 nm CWレーザー)を照射すると,スピン緩和時間が大きく変化することを見出した.光ゲートでスピン軌道相互作用を制御できる可能性を示唆し,新規な結果と言える.またRashbaとDresselhausのスピン軌道相互作用(SOI)を考慮したモンテカルロシミュレーションを実施し,スピンの時空間マッピングも含めたダイナミクスを解析する手法を確立した. (2)に関連する実験では,InGaAs多重量子井戸における電界制御を試みた.電極付けを行い,発光スペクトルのゲート電圧依存性の実験を行ったが,電界が弱いため,本来観測されるべきピークシフトまでは観測されなかった.局所的に強い電界を掛ける為には,単一量子井戸で行う必要がある.(2) の目標は達成できていないが,GaAs量子井戸にゲート電界を印加できれば,上記のシミュレーション結果と比較し,内部有効磁場を明らかにできる. 上記以外に,高強度チェレンコフTHzパルス発生を行った.この実験は,平成27年度の計画で実施される予定であったが,時間が掛かるため,昨年度から着手している.測定の結果,発生したTHzパルスの電界強度は現時点で500V/㎝程度で,スピンを制御するためには二桁以上増強する必要がある.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度における目標のうち、(1) GaAs単一量子井戸(SQW)の作製とスピンダイナミクスを観測するための時間分解光学系の構築は行い、スピンダイナミクスを観測できるよにした.また(2) スピン緩和時間のゲート電圧依存性は測定できていないが、量子井戸内部の有効磁場を明らかにするための、モンテカルロシミュレーションを行い、スピンダイナミクスとRashbaやDresselhausスピン軌道相互作用係数αやβの関係を明らかにした。 その他、チェレンコフテラヘルツ発生のための、光学系の構築を終了し、テラヘルツパルス発生を確認した。この実験は平成27年度に行う予定であったが、時間がかかるため前倒しで進めている。以上のことから、概ね順調に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、GaAs単一量子井戸の電界制御を試みる実験から着手する。まず、ショットキー接合を行い、逆バイアスの下でGaAs単一量子井戸の発光スペクトルのピークシフトを確認する。そして、スピン緩和時間の電界依存性の結果と既に確立したモンテカルロシミュレーションによる計算結果を比較することで、RashbaやDresselhausスピン軌道相互作用係数αやβの関係を実験・理論両面から明らかにする。 また、スピン制御のために発生したチェレンコフテラヘルツパルスの高強度化を狙う。チェレンコフテラヘルツパルス発生を行うためには、基本波であるパルスレーザ光源を非線形結晶に照射する。そこで、照射するビーム径・角度や発生したテラヘルツパルスを効率的に試料へ転送し、集光する方法を確立する。 次年度に向けたテラヘルツパルスによるスピン制御に向けた要素技術を確立する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に寒剤を購入し、実験を進める予定であったが、装置の不調で実験ができなくなった。そのため、次年度始めに寒剤を購入し、実験計画の変更があったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度始めに寒剤を購入し、中止した実験を直ちに開始する予定である。
|