研究課題/領域番号 |
26390083
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上向井 正裕 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80362672)
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研究分担者 |
栖原 敏明 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90116054)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 半導体レーザ / 光集積デバイス / DBRレーザ / 波長可変レーザ / 2波長レーザ / 量子井戸無秩序化 |
研究実績の概要 |
本年度は2波長集積半導体レーザに集積するITO薄膜ヒータ装荷波長可変DBRレーザを作製・評価するとともに、低損失受動導波路形成のための量子井戸選択的無秩序化技術の確立に取り組んだ。 1.高い利得が得られる808nm帯GaAsP歪量子井戸導波路構造を用い、DBRグレーティングを効率よく加熱できるITO透明薄膜ヒータをDBR直上に装荷した波長可変DBRレーザの作製と評価を行った。このDBRレーザをCW駆動することで、出力光パワー50mWまで良好な単一モード発振が得られた。またヒータでDBRを加熱するにともなって発振波長は798.8nmから804.0nmまで変化していき、160mWの少ないヒータ消費電力で5.2nmにわたる広い波長可変範囲が達成できた。波長可変範囲全体にわたって良好な単一モード発振が維持され、ヒータ加熱による出力光パワーの低下も2割程度であった。 2.低損失受動導波路形成のため、Fイオン注入と熱処理によるGaAsP歪量子井戸の無秩序化を試みた。Fイオンを注入した試料と注入していない試料を熱処理した後、量子井戸の無秩序化の程度をフォトルミネッセンス測定により評価することで、選択的無秩序化に適した熱処理条件を見出した。また量子井戸を無秩序化した導波路と無秩序化していない導波路を形成し、カットバック法によりに両導波路の導波光伝搬損失を測定した。量子井戸無秩序化により、レーザ発振波長における伝搬損失を約15/cm低減できることがわかった。この技術を応用することによりマルチモード干渉結合器を集積した2波長レーザが実現可能となるため、この結合器の設計と試作を行い、特性を評価した。 3.新規微細構造作製法であるナノインプリント技術を応用したDBRレーザや、簡便な構造で単一モード発振が得られるファブリペロー/リング複合共振器レーザについても試作と評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単独の波長可変DBRレーザにおいては当初の目標を達成する高出力で広い波長可変範囲のレーザ発振特性が得られたが、このDBRレーザ2本とY型結合増幅器を集積した波長可変2波長レーザについては、実際に作製したものの活性領域への電流注入に問題が生じ、発振特性を評価するには至らなかった。 一方、量子井戸選択的無秩序化においては、Fイオン注入と熱処理によりGaAsP歪量子井戸を無秩序化できることを確認するとともに、選択的無秩序化に適した熱処理条件を見出した。さらに量子井戸を無秩序化した領域としていない領域に導波路を形成して両領域の導波光伝搬損失を測定し、量子井戸無秩序化によりレーザ発振波長における伝搬損失を低減できることを確認し、当初の計画を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
試作した2波長集積レーザの活性領域への電流注入に関する問題は、複雑なデバイス作製プロセスにおいてコンタクト層が徐々にエッチングされたためであることがわかった。作製プロセスを見直し、エッチングされる可能性のあるプロセスでは保護マスクを形成しておくなどして、コンタクト層のエッチングを防止する。再度、波長可変2波長集積DBRレーザを作製し、2波長発振特性を明らかにするとともに、当初の計画通りフォトミクサと組み合わせ周波数可変テラヘルツ波の発生・検出実験を行っていく。 またマルチモード干渉結合器を集積した波長可変2波長レーザについても、量子井戸選択的無秩序化技術を用いることで実現の目処がつき、設計・作製を進めていく。3本のDBRレーザとマルチモード干渉結合器を集積した波長差選択式2波長レーザについても、設計・作製を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込額と執行額が異なった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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