研究課題/領域番号 |
26390086
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
遠藤 雅守 東海大学, 理学部, 教授 (60317758)
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研究分担者 |
宇野 和行 山梨大学, 総合研究部, 助教 (20550768)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 軸対称偏光 / CO2レーザー / アジマス偏光 / レーザー加工 / パルスレーザー |
研究実績の概要 |
本研究は,申請者が発明した「トリプルアクシコン光共振器」を用い,軸対称偏光で発振するパルス炭酸ガス(CO2)レーザーを開発するとともに,開発したレーザーを用いて炭素繊維強化プラスチック(CFRP)加工の基礎研究を行うものである. 本年度は,昨年度開発に成功したレーザーを用いて,CFRPを含む各種樹脂への穴あけ加工を実施した.実験は,単レンズ(f=50mmまたは127mm)を用い,レーザーを材料表面へ照射して,レーザーが材料を貫通するまでの時間を評価する方法で行った.パルスエネルギーは18mJ,繰り返しは3Hzである.多くの材料で,ラジアル偏光,アジマス偏光,ランダム偏光による貫通時間に差が見られたが,その差は材料異存で一貫していない.ただし,本研究申請時に指摘したように,アジマス偏光による加工が1.5倍ほど他の偏光より早い材料が多かった. CFRPの穴あけ加工においては特異な現象が観測された.厚さ0.5mm,2層CFRPをf=50mmのレンズを用いて穴あけ加工したところ,アジマス偏光は数秒で貫通したが,ラジアル偏光,ランダム偏光は120秒かかっても貫通できない場合があった.ただし,これらの偏光でも10秒以内で貫通したケースもあり,貫通時間のバラつきは大きい.ラジアル,ランダム偏光の平均貫通時間は約40秒で,ラジアル偏光の10倍ほどであった. CFRP穴あけ加工に見られた,ラジアル偏光のみが特異的に穴あけ性能が優れる理由は未だわかっていない.今後は現象を説明できるモデルを構築し,軸対称偏光CO2レーザーがCFRP加工に有効であることを実証する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的は,アジマス偏光CO2レーザーがCFRP加工に有利であることを示すことにある.昨年度見出された,アジマス偏光のみが特異的に穴あけ性能が良い現象は,我々の予想を大きく越えるどころか,当惑させるに充分なものであった. 一般に,レーザー加工の早さは,平均パワーが同じなら材料への吸収率に左右される.ラジアル偏光とアジマス偏光の材料に対する吸収率が10倍というのは考えられないこともないが,ランダム偏光は全ての方向の偏光をまんべんなく含むため,第一次近似ではアジマス偏光の半分程度の加工性能を期待しても良い.しかし,観測された現象は,ランダム偏光の加工性能もまたアジマス偏光の1/10であった.
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ,CFRPへの穴あけ加工で見られた,ラジアル偏光の特異的な性能向上を合理的に説明できる理屈を我々は持ち合わせていない.しかし,幸いにして現象の再現性は良好である.また,昨年度実施した他の材料とCFRPの違いは,材料の著しい非等方性である.平成28年度は,これを手がかりにして,現象を説明できるモデルを構築することが急務と考える. また,研究計画書にあるように,スケールアップした装置でのより実際的な加工試験も実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
山梨大学に分担したした交付金がほぼ半分余っている.初年度にレーザー作成のために100万円を配算したが,相当額の余りが発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
3年めの加工試験,出張旅費に充てる予定である.
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