研究課題
環境汚染や生命に関わる気体は中赤外域(3~30ミクロン)で発振する量子カスケードレーザ(QCL)を用いることで検知可能である。しかし既存の光検出器は速度の点が未だ不十分で、QCLの性能を活かしきれていない。そこでサブバンド間遷移を利用した光検出器の実現で応答速度の向上を目指した。光を吸収させる量子井戸層を薄くすれば高速性の実現は可能だが、その分、光の吸収量が少なくなってしまう。それに対して光捕集・電界増強効果を持つ光アンテナを量子井戸層の上に搭載すれば十分な光を吸収でき、高感度の実現も両立でき、問題が解決できる。サブバンド間遷移には垂直方向の電界Ezが必要であるが、円形光スロットアンテナを用いればEzを生み出すことが出来る。光検出器へ応用では光アンテナが作り出す電界分布を把握しなければならない。そこでEzに応答する表面フォノンポラリトン(Surface Phonon Polariton: SPhP)の信号強度を目印にして実験的に電界分布を調べた。そのためにこれまでに開発してきた原子層堆積法(ALD)による手法を用いた。具体的には基板にSiCを用い、その上にALDでAl2O3を形成し、その厚さを10~100nmの範囲で変えた。そしてその時に現れるSPhP信号の強度を観ることでEzに対する増強度の深さ依存性を調べた。光アンテナ直下の電界増強は金属を含むような構造ではFDTD等による解析が難しく、精度に欠ける。このようにアンテナによる電界の増強度を実験的に求める試みは初めてであり、実際的な意義がある。次に実際に量子井戸の上に光アンテナを搭載した素子を設計した。その後、GaAs基板上に3層からなるGaAs量子井戸層をMBEで形成した。FTIRでその反射スペクトルを測定した結果、光アンテナ効果によって設計どうりに~10ミクロンにサブバンド間遷移が実現されていることを確認できた。
すべて 2017 2016
すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)