研究実績の概要 |
最終年度の目標として、ファイバレーザー単一モジュールあたりの連続波出力として5Wを得るための研究を重ねた。これまでの二年間の成果を生かし、コヒーレントビーム結合もしくはコヒーレント共振器結合のいずれかの技術を選択する必要があった。最終的に、複数のファイバレーザー共振器を単一の出力結合鏡(レーザー出力側に用いる光の帰還用低反射ミラー)と各ファイバレーザー共振器の増幅媒質で増幅された帰還光を出力側に戻す高反射鏡の間で発振し、一体化させることにより単一のファイバ出力から高出力を得るコヒーレント共振器結合を用いて目標出力を達成する実験を行った。 構成として5本の増幅用光ファイバ(すなわち共振器数)を用いた。従来技術では2の累乗本数(2, 4, 8・・・)の増幅用光ファイバを用いるしか方法が無かったが、前年度までの成果により、任意の共振器の共振器結合を可能とする技術を開発できていたので、最適な共振器数を結合可能となり、適切な数の光方向性結合器を用いることによって、最大の効率を維持しながらレーザー出力を高めることが可能となった。 最終的なファイバレーザー出力は、単一の横単一モードファイバ出力として、波長1550nm帯において5.09Wを得ることに成功した。これは、励起用半導体レーザー光源から共振器まで、全てのファイバに単一モードファイバを用いた例としては最大である。 今回、ファイバレーザーを全て単一モードファイバで構成し、ワット級の出力を得ることが可能となり、また、励起源である半導体レーザーも通信用の極めて安定性と信頼性の高い物を用いることが可能となったことから、高い出力だけで無く、高効率および振動や温度および湿度変化などに対する高いロバスト性を得たレーザーを構成できること実証でき、製造現場から航空宇宙環境まで広い応用範囲が期待できるファイバレーザーを実用化可能であることを示した。
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