研究課題/領域番号 |
26390091
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研究機関 | 秋田県産業技術センター |
研究代表者 |
山根 治起 秋田県産業技術センター, その他部局等, 上席研究員 (80370237)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 先端機能デバイス / 光物性 / 磁気光学 / プラズモン / バイオ化学センサ |
研究実績の概要 |
本研究では、遷移金属/貴金属積層ナノ構造体に、二次元周期の微細加工を施すことで三次元的な周期構造を有する磁性ナノプラズモニック結晶の構築を目的としている。特に、遷移-貴金属ナノ微粒子で見出した磁気光学効果の異常な増大現象の物理的解明と共に、局在プラズモン共鳴による磁気光学増強効果を周期ナノ構造によって共鳴結合させることでさらなる増大を図る。本研究は、磁性ナノプラズモニクスを目指した新たな取り組みであると共に、その成果は、プラズモン共鳴を利用した既存の製品に比較して2桁以上の検出感度を有する新たな高感度バイオセンサの実現にも繋がるものである。 平成26年度は、磁性ナノ構造積層体に関する研究において、通常の単層膜に比較して約200倍におよぶ非常に大きな磁気光学特性(偏光角:±18度)を実現することができた。学会発表ならびに特許出願を行うとともに、バイオ化学センサとして早期の実用化を図るため、企業との共同研究も新たに開始するなど、当初計画よりも大きく進展することができた。次年度以降に予定した評価システム構築にも取り組むことができている。 さらに、当初計画であった、磁性ナノ粒子における磁性プラズモン共鳴に関する研究にも並行して取り組んでおり、学会・論文発表に繋がる成果が得られた。特に、表面凝集現象によって形成したAgナノ粒子上に作製したCoPt-Ag垂直磁化膜では、特異な磁気光学物性を見出しており、本現象がAgナノ粒子で発生した局在プラズモンによる磁気光学効果の位相反転に起因する物理現象であることを明らかとし、学会誌にも掲載された。 これらの研究成果をもとに、平成27年度以降は、電子線リソグラフィ等の微細加工に関する実験を進めることで、さらなる特性向上を目指した磁性ナノプラズモニック結晶の構築に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、遷移金属/貴金属積層ナノ構造体に、二次元周期の微細加工を施すことで三次元的な周期構造を有する磁性ナノプラズモニック結晶を構築することで、プラズモン共鳴を利用した既存の製品に比較して2桁以上の検出感度を有する新たな高感度バイオ化学センサの実現を最終目標としている。 平成26年度は、磁性ナノ粒子における磁性プラズモン共鳴に関する研究に取り組み、学会・論文発表に繋がる成果が得られた。特に、表面凝集現象によって形成したAgナノ粒子上に作製したCoPt-Ag垂直磁化膜では、特異な磁気光学物性を見出しており、本現象が本現象がAgナノ粒子で発生した局在プラズモンによる磁気光学効果の位相反転に起因する物理現象であることを明らかとした。本研究成果は、学会誌(Applied Physics Letters)にも掲載された。 さらに、磁性ナノ構造積層体に関する研究においては、通常の単層膜に比較して約200倍におよぶ非常に大きな磁気光学特性(偏光角:±18度)を達成することができた。当初計画では、研究初年度は、可視光領域で±1度以上の偏光角を有する高性能磁気光学材料の開発を目標としていたが、本目標値に対して10倍以上の性能を実現することに成功した。本研究成果に関して、学会発表ならびに特許出願を行うとともに、バイオ化学センサとして早期の実用化を図るため、企業との共同研究も新たに開始するなど、当初計画よりも大きく進展することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、研究初年度に大きな進展があった磁性ナノ構造積層体に関して、さらなる性能向上を目的として、引き続き材料・デバイス開発に取り組む。特に、バイオ化学センサとして実際の利用を想定し、素子構造の最適化ならびに高精度の性能評価を可能とする評価システムの構築に関する研究開発を実施する。バイオセンサとしての応用を考えた場合、溶液中など様々な環境下において詳細な素子評価を行う必要であり、独自の評価システムを構築する。 また、当初予定していた、磁性ナノ構造体への微細加工による三次元的な構造を有する磁性ナノプラズモニック結晶の研究にも同時に取り組む。上述のように、磁性ナノ積層体では、当初目標を上回る性能を既に実現できていることから、電子線リソグラフィ等による微細加工を用いた二次元周期構造の付与は、さらなる特性向上に繋がるものと期待できる。 最終年度である平成28年度は、当初計画通り、本研究で得られた成果をもとに、実際にバイオ化学センサを作製して検出感度、検知速度あるいは検知濃度範囲など製品として実用化した場合を想定した素子性能の評価を行う。それとともに、以上の検討により得られた研究成果を取りまとめて、学会・論文発表および特許出願を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも進展があったため、次年度に予定していた評価システムの構築にも取り組むために、前倒し支払請求を行って必要な光学部品等を購入した。年度途中での計画変更であったために十分な調査ができず、納期が間に合わない等の理由により、使用額との差が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の評価システムは、現在も改良を進めており、必要な部品の購入に充てる予定である。
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